ZOZOSUITは使える? プロのテーラーが測定し検証
「もうサイズ選びで悩むことがなくなる」。ファッションECサイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するZOZO(ゾゾ、旧スタートトゥデイ)は、そんな強気のうたい文句で体型サイズを測れるウエア「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」を発表。その計測技術を武器に、オーダーメードのプライベートブランドシリーズ「ZOZO」を本格導入した。今回は、ZOZOのサイズ測定と新サービスがどれくらい使えるのかを検証した。
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ファッションの専業ECでは、ZOZOTOWNが抜きん出ている。多くの企業やブランドが出店する「モール型ECサイト」として04年にスタートすると、「リアル店舗でしか購入できなかった多数の有名ブランドの誘致に成功した」(ファッションECに詳しいビジョナリーホールディングスの川添隆氏)ことで躍進。18年7月には、ファストファッション国内大手「しまむら」も参戦するなど、人気ブランドから低価格業態まで幅広くカバーし、今や6800ブランド超、常時65万点以上のアイテムをそろえる一大プラットフォームに成長した。多くの商品でサイズをサイト向けに計測して表記を統一するなど、使い勝手の良さも人気の理由だ。
ZOZOはさらにZOZOSUITの計測技術を武器に、オーダーメードのプライベートブランド(PB)シリーズ「ZOZO」を本格導入。大量の型から最適なものを選ぶパターンオーダーのTシャツは、税込み1200円から買える手ごろさが売りだ。さらに、パターンオーダーのデニムパンツも同3800円と破格。一点一点型を作るカスタムオーダーのビジネススーツまで展開する。
SUITで2人を測定すると…
専用の水玉ウエアを着て、スマホのカメラで12枚の写真を撮ると体形サイズが瞬時にわかる「ZOZOSUIT」。正確に計測できているのか、体形の異なる男性モデル2人で実際に試し、オーダーメードスーツを手がけるプロのテーラーによる計測と比べてみた。
ZOZOSUITで測ったものが上段の数字だ。対して、その下の数字がテーラーが手で測ったもの。結果から言うと、その差は全体的に小さかった。
身長171cmの男性モデルでは、人の手による計測との差は18カ所のポイントを平均すると1cm以下になり、どこでも差は2cm以下に収まっていた。186cmの男性モデルでも、平均の差は1.2cm程度だった。ただ、後者の長身男性の場合、差が大きく出た部分もあり、特にヒップは4cm以上もテーラーの数値と異なる結果に。ZOZOSUITは、計測を繰り返すと1~2cmほど計測結果が変わるケースもあったため、着用方法などをしっかり確認するのが肝要だ。
さらに、実際にデニムパンツとTシャツを注文したところ、上下ともに「体に合わせた標準的なサイズに仕上がっていた」と、今回測定に協力してもらったルイージ ビスポークテーラー代表の橘修氏も驚きを見せた。ヒップの数値がテーラーの計測より小さく出た長身男性のケースでも、パンツの寸法は計測値にややゆとりを見て作られ、意外にもちょうどよい仕上がりに。
「服飾の教科書的には、ヒップ部は実測値プラス5cm程度で作るのが基本」(橘氏)というが、今回のZOZOのデニムは計測値に8~10cmほどプラスされた寸法で作られており、結果的にフィットしたと想像される。「実測値から実際の服のサイズに換算する計算式は、メーカーや作り手により異なる」(橘氏)。ZOZOのアルゴリズムは公開されていないが、何らかの補正が働いた可能性がある。「この価格帯でオーダーができると考えると、品質も含めてコストパフォーマンスは高い」と橘氏は言う。
試着してみてフィットしなかった場合や、よりタイトめにしたい、ゆったりめにしたいという場合でも安心だ。パターンオーダーの場合、到着後30日以内なら別のサイズと交換が可能。交換手続きの際に、「肩幅をプラス(マイナス)○cm」「総丈をプラス(マイナス)◯cm」などと指定するだけ。好みのカスタマイズがわかれば、その後は注文時に同様の補正を加えればいい。
デニムとTシャツのフィット感は高評価だったが、「スーツはより緻密なフィッティングが必要」と橘氏は指摘。例えば、「ジャケットはバスト部分が1cm違うだけでVゾーンの美しいラインが出ない」(橘氏)という。さらに、ヒップも数センチの差でシルエットが台なしになる。ZOZOSUITのアルゴリズムは、アップデートにより修正が加えられ、利用するユーザーの実測データと着用感などの情報を基に、精度が高まるとみられる。今後利用者が増えれば、実用度は増しそうだ。
たるみは厳禁! 着方にはコツも
計測方法には課題もある。全身に施されたマーカーの位置をカメラで捉えてサイズを計測する仕組みだが、そのマーカーが本来対応すべき体の位置に重なっていないと正しい数値は得られない。着方に依存するのだ。特に注意すべきが、足首や手首のマーカーの位置。SUITの袖や裾をしっかりと伸ばさずに計測すると、袖や裾が短くなり過ぎる場合も。胴回りのサイズでは、SUITのシワやたるみに注意したい。
次ページで計測する際の手順と注意点をまとめた。
ZOZOSUITの着用の仕方が正確に測るカギ
ZOZOSUITをシワやたるみがないようにしっかり伸ばして着用するのが正しく測るコツ。同梱されている紙製のスタンドを約70cmの高さの机に置き、専用アプリの指示にしたがって測定の準備をする。その後、スタンドにスマホを置き、約2m離れたら準備が完了だ。
アプリの音声による指示に従って、カメラに向いて時計回りに12時、1時、2時、3時……の方向にぐるっと回転しながら12枚の写真を撮影する。背景はできるだけ何もない壁のほうが、エラーになりにくかった。
12枚の撮影が終わったら、あとは自動で体形サイズに換算される仕組み。数値データはアプリに加え、ウェブサイトでも閲覧が可能だ。複数の測定データを保存しておけるので、日々のサイズ変化などを追うことも容易。
アプリの測定結果を表示するページから、簡単に自分サイズのアイテムを注文することができる。デニムパンツやTシャツはパターンオーダーで、ビジネススーツはカスタマイズオーダーになる。注文の際には、肩幅や総丈などを自分好みに補正することも可能だ。
(注)カスタムオーダーの場合、商品到着後1年間はサイズ直しが可能
(注)オーダーメードスーツは通常価格3万9900円(税込み)だが、9月中旬時点では2万1900円(同)のキャンペーン価格で販売している
[日経トレンディ2018年11月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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