アウトドアブランドのアウター 高機能で街でも快適
秋の街着はスポーツ&アウトドアウエアで決まり
ここ数年で、スポーツ・アウトドアブランドの新しいアパレルラインが急増している。それらは街で着ることを想定したデザインであるという共通点を持つ。一般的なファッションブランドとの違いは、やはり機能性だ。
スポーツ・アウトドアブランドのウエアについて「各ブランドがこれまで培ったノウハウを取り入れているので、従来のアパレルとは一線を画す『着心地のよさ』『着やすさ』がある」と話すのはキャンプ用品大手のスノーピーク企画開発本部アパレル企画開発部開発課マネージャーの菅純哉氏。軽量、はっ水性、動きやすさといったスポーツ・アウトドア由来の機能性や着心地のよさが、一般消費者に広く認知されたことでタウンウエアとして人気になり、その結果、街着デザインのアパレルラインが増えたのではないかと分析する。
「キャンプなどのアウトドアシーンでのファッションも変わってきています」と教えてくれたのは、自転車にルーツを持つフランスのスポーツブランド、ルコックスポルティフで、都市型ライフスタイルウエアライン「ル・アーバンスタイル」のPRを担当する4Kの藤本梨央氏。「以前に比べて街着のような服装の人が増えている傾向にあるのです。そういった背景も、スポーツ・アウトドアブランドのタウン向けアパレルが支持される理由のひとつではないでしょうか」
そこで今回は、スポーツ・アウトドアブランドのタウン向けアウターの注目作を紹介する。それぞれの製品はユニークなコンセプトを持つものばかり。アウトドアウエアの機能性とファッション性を兼ね備えているので、冬の街着として活躍するに違いない。
キャンプでも着られるライダース
アウトドアメーカーとして高い人気を持つスノーピークは、2015年秋冬シーズンからファッション性の高いアパレルラインを展開している。アウトドアメーカーとは思えないデザインのウエアをラインアップしているが、なかでも注目したいのが18年秋冬シーズンに登場したライダースジャケットだ。
「アウトドアメーカーがライダース?」と思うかもしれないが、本作は「キャンプシーンでも着ることができるライダースジャケット」というコンセプトをもとに開発された一着。カーシートなどに使用されるフェイクレザーを使用し、難燃性・耐摩擦性を備えているのが特徴で、キャンプのたき火にも安心してあたることができる。
また、バイカー向けに作られた合理的なデザインはあえて崩さず、着丈を短くしているのもポイント。テント設営時など、キャンプシーンでは中腰姿勢になることが多く、その際の動作を軽減する作りとなっている。そのほかフロントの開閉をダブルファスナーに変更したり、中綿を入れて防寒性を高めていたりと、目立たない部分を改良して着やすさと意匠性を向上している。
街でもキャンプでも着られるライダースジャケットは、「ほかにはない商品なので、秋冬重衣料が動く9月中旬から売り上げを好調に伸ばしています」(菅氏)。特徴や用途を的確にPRしたことも功を奏したそうだ。主にキャンプやアウトドア好きに支持されているが、それとは別に、「レザーのライダースを着たいけど重くて動きにくい」と二の足を踏んでいた人の購入も多いという。
ヒーター搭載の3シーズンコート
フランスのスポーツブランド「ルコックスポルティフ」の都市型ライフスタイルウエアライン「ル・アーバンスタイル」から、2018年秋冬モデルとして登場したのが、ヒーター機能を搭載したコートだ。
左内側にUSBコネクターを備えたポケットがあり、ここにモバイルバッテリーを接続すればヒーターが作動。ヒートユニットは背中の上部と両脇のポケットに付いている。背中上部は人間がもっとも暖かさを感じる部位なので、効率よく保温できる。ヒーターの温度は弱・中・強の3段階に調節でき、付属の5000mAhのモバイルバッテリーで最大7時間の連続使用が可能。これだけ持てば外出中の充電切れを心配しなくてもいいだろう。
注目してほしいのは、バイカー用のヘビーアウターやダウンジャケットではなく、コートにヒーターを搭載した点。コートに採用することでロングシーズンの着用を可能にしている。秋から着られて、ヒーターを使えば冬にも対応。春はスプリングコートとしても使える。シンプルなデザインなので、休日だけでなくビジネスシーンにも着用できるのもうれしい。
素材には、はっ水性と形態回復機能のある「ソロテックス」を採用。シワがつきにくく、手でなでるだけである程度シワが伸ばせるので旅行にも最適。9月に発売したばかりだが、売り上げは好調だという。
大容量ポケットに通気性の高い素材を採用
スキーウエアブランドのフェニックスから派生し、「歩くための機能服」をキーワードに2015年に誕生した「アルクフェニックス」。「歩く=日常生活」と捉え、機能的でファッション性の高いタウン向けアパレルを展開し、多くのユーザーから支持されている。
昨今のスポーツ・アウトドアブランドの街着が人気であることに対し、フェニックスのマーケティング部マーケティング課課長の大山吉輝氏は、「機能性の高いスポーツ・アウトドアウエアは、街着としても非常に使い勝手のよい衣料が多いと感じます。それらが街着として成り立つデザインを持つウエアであれば、多くの消費者が好んで着用することは必然」だと話す。
そんなアルクフェニックスの注目作は、18年9月に発売されたコートだ。手ぶらで歩くために、バッグ並みの大容量ポケットを装備したブランドの定番コート「ザックコート」をベースに作られた新モデルで、素材がアップデートされている。
表地に通気性・耐久はっ水性・ストレッチ性を備えた「カルストレッチベント」という独自開発の軽量生地、中綿には優れた通気性・保温性を持つポーラテック社の「Alpha」を採用した。日常生活では屋外でじっとしていることは少なく、たいていの場合は何かしら活動していることを考慮し、「ダウンコートのような極端な暖かさはあえて持たせず、ほどよい保温性と通気性、軽量性を優先した」(大山氏)という。
さらに、非常に高い導電性とコロナ放電性を持つ機能素材「サンダーロン」を内側のステッチ内に使用することで、摩擦による静電気の発生を抑制したという。デザインの特徴にもなっている大容量のポケットは、左右それぞれ4つのパートに仕切られており、財布やスマホなどを分けて収納できる。
大山氏によると「アルクフェニックスの商品は、日用品だけでなく衣料においても機能性を求める・モノにこだわりを持つ男性から支持されている」という。国内だけでなく海外からの問い合わせも多く、「リピーターが多いこともブランドの特徴」と胸を張る。
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アウトドアブランドのアウター 高機能で街でも快適
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(ライター 津田昌宏、写真 野町修平=APT、スタイリング 宇田川雄一)
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