「なぜシワができるのか」の原因を探り、シワを改善する独自の有効成分を見出して、化粧品に仕上げるまでに7年。シワを改善する医薬部外品として厚生労働省の承認を取得するまでに8年。合計15年、投資金額は15億円にのぼった。あまりのハードルの高さに周囲から何度も「別のことにお金と時間を使うべきだ」の声があがり、部長会で毎月のようにつめよられた時期もあった。それでも末延氏は決してあきらめなかった。

実績のない若手ばかりの開発チーム

開発スタート当時のメンバーらと。写真。左から2人目が当時35歳の末延さん。

2002年のプロジェクトスタート時のメンバーはわずか4人。「化粧品開発の経験が全くなく、研究者としての実績もない『日陰の花』みたいな35歳の私と、30歳前後の若手研究員ばかり。明らかに『二軍チーム』でした。要するにあまり期待されていなかった」と末延氏は振り返る。しかし、胸には期するものがあった。

働く女性が増え、女性の在宅時間が短くなったことで、1990年代以降、訪問販売の化粧品市場は急激にシュリンク。訪販専業最大手であるポーラも業績不振に見舞われていた。そんな中、2000年にトップに就いた鈴木郷史社長は、改革の柱として、社内の医薬品部門と化粧品部門の壁をとっぱらって素材開発をする「皮膚薬剤研究所」を設立する。化粧品には今後「サイエンス」が重要になると考えたからだ。

入社から11年間、医薬品開発者として結果が出せず、うつうつとしていた末延氏。そこで身に着けてきたノウハウを化粧品開発に役立てられる商品は何か。そう考え、提案したのが日本にはまだない、「シワを改善する薬用化粧品」だった。

遠回りの開発手法を選択

他社も水面下で「日本初のシワ改善化粧品」を目指していることは明らかだった。まだこの世にない商品だけに、1番手と2番手とでは、意味が全く違う。最短でゴールにたどり着くためには何をすべきか。末延氏がチームに指示した作業は、化粧品の開発方法としては異例の「遠回り」だった。

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