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「チャット小説」って何? 中高生がスマホで夢中

日経エンタテインメント!

2018/10/26

「ケータイ小説」が日本中の女子中高生の間で大流行したのは約10年前。携帯電話といえばスマートフォンとなった現在、若者たちの間で人気を集めているのが「チャット小説」です。

久保田涼矢 FOWD代表取締役社長。高校卒業後、複数のベンチャー企業を経て、15年にオンラインゲーム大手のコロプラに入社。17年6月に現在の会社を創業(写真:加藤康)

チャット小説は、LINEのようなチャット形式の会話でストーリーが展開します。主にスマートフォンで楽しまれており、画面をタッチするごとにコメントが進むため、どこまで読んだのかも分かりやすい。読者層は中高生を中心に、小学生にまで広がっています。

2017年の7月にサービスを開始した「Balloon」は日本最大級のチャット小説サイト。プロだけでなく、一般ユーザーも作品を投稿できるプラットフォームで、現在6万を超える投稿作品を読むことができます。チャット小説は今後、エンタテインメント界をどう変える可能性があるのかを、開発者であるFOWDの久保田涼矢代表取締役社長に聞きました。

聞き手は、MTVジャパンやユニバーサルミュージックなどで、次世代の“エンタテインメント×テクノロジー”の新規事業開発を担当してきた鈴木貴歩さんです。

◇  ◇  ◇

チャット小説では、どういったジャンルのものが人気を集めているのでしょうか?

「恋愛とホラーが人気です。恋愛は読者層に若者が多いことが大きく影響していて。学校内での恋愛を描いた王道のストーリーもあれば、タレントとの妄想恋愛を描いたものもよく読まれています。例えば、人気K‐POPグループのマネジャーとなり、メンバーからチヤホヤされるみたいな話とか。

また、ホラーが人気なのは、チャット小説の特性である“次にどういう会話が出てくるか分からないこと”をうまく生かせるから。一方、SFやバトルものは情景描写がないと伝わりづらいため、まだチャット小説のフォーマットを確立できておらず、比較的数が少ないかもしれません」

ドロドロの恋愛系ばかりが人気を集めていた、ケータイ小説とは違ってきていますね。時代やデバイスの変化とともに、若者の文字の読み書きに対する意識も変わってきているんでしょうね。

「スマートフォンが生活の中心となった今、若者たちはLINEにツイッター、インスタグラムなどを同時並行でやりながら、チャット小説を読んだりしています。意外と生活の中で文字に触れているんですよね。書くという観点で見ても、LINEで瞬発力が養われたり、ツイッターでは140文字内で論理的にまとめるなど、短文に関する文章力は、かなり鍛えられている気がします」

■編集部を備え、若手の育成も

「Balloon」国内のユーザー投稿数No.1のチャット小説サービス。読むのも投稿するのも基本無料で、連載のストーリーは毎日更新される。公式作家になれば報酬を受け取ることもできる。

チャット小説は、今の若い子たちにとって読みやすく、しかも表現しやすいわけですね。つまり、「Balloon」は新しい世代の書き手が生まれる場にもなりうる。

「はい。例えば、現在シーズン3に突入している恋愛小説『身長差カップル』は、シーズン1、2ともに100話を超えるなど、Balloonには読み切りだけでなく、連載作品も数多く投稿されています。

これを可能にしているのは、Balloonが編集部を備え、人気作品には編集者も付けているから。新しい才能の発掘と育成にも力を入れているんです。

また、タップで話が進むチャット小説の特性を生かし、『読者がどこでドロップアウトをしたのか』などのデータを、作品すべてから取っています。そこから、『漢字や“!”“?”の適量はどれぐらいなのか』『それが都会と地方の10代でどんな差があるのか』『1セリフあたりの文字量はどれくらいが適切か』などが見えてくるんです。それを編集者から作家にフィードバックしています。いずれはデータを集積して、チャット小説のヒットの法則を数値化できればと。今後、データは出版社などにも積極的に提供していく予定です」

19年には「チャット小説大賞」も創設するんですよね。

「今の若者たちが表現しやすいチャット小説から、新たな才能を発掘できればと思っています。そして賞自体も、映画制作会社や出版社といったコンテンツを作る会社を巻き込んだものにする予定です。そうやってちゃんと出口を設けることで、ワンストップでその才能が花開くような仕組みにしたいと考えています」

鈴木貴歩
ParadeAll代表取締役。“エンターテック”というビジョンを掲げ、エンタテインメントとテクノロジーの幸せな結びつきを加速させる、エンターテック・アクセラレーター。エンタテインメントやテクノロジー領域のコンサルティング、メディア運営、カンファレンス主催、海外展開支援などを行っている。

(構成:中桐基善)

[日経エンタテインメント! 2018年10月号の記事を再構成]

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