出世ナビ

キャリアの原点

渡辺謙をハリウッドへ 奈良橋陽子氏、配役の目利き力 キャスティングディレクター 奈良橋陽子氏(上)

2018/11/6

「学年の枠を超えて『ハウス』というグループをつくり、スポーツや読書、手芸などの成果を得点化して競う伝統があったのを覚えています。中でも楽しかったのが、芝居でした。皆で意見を出し合いながら、一つのものを作り上げていくプロセスが面白かったですね」

■「演じること」との出合い

小さい頃から絵や詩で心の声を表現してきた

そして、入学して間もない頃に参加した芝居をきっかけに「俳優になりたい」という志を強めていく。

「『ローズマリー』という名前のウサギの役を演じたのですが、見た先生がそれ以来、私を『陽子』ではなく『ローズマリー!』と役名で呼ぶようになって。それが、無性にうれしく感じたんです。自分とは違う誰かになりきれる感覚に心が躍りました」

「演じることへの憧れ自体は物心ついた頃からありました。母親に映画『風と共に去りぬ』を見せてもらい、心を奪われたんです。自分はほんの小さな日本人の女の子なのに、遠くアメリカ南部の美しい女性に思いを馳せ、その物語に入り込むことができる。今いる世界から、全く違う世界へ飛び立てる。映画に限らず、バレエなどの舞台を見るときも、その『飛べる感覚』が楽しくてしかたありませんでした」

16歳で日本に帰国後、大学在学中から卒業後まで、演技の勉強を続けていた奈良橋氏。やがて俳優としての自身の成長に限界を感じるようになり、キャスティングや演出へと軸足を移していく。それでも「根本にある思いは変わらない」と語る。

「俳優であればどうしても、自分の生まれ持ったこの身体で演じきれるのはここまで、という枠がある。おそらく私は、もっと自由になりたかったのです」

キャスティングディレクターであれば、脚本を読み込んだり、監督や俳優と話し合ったりしながらイメージを広げていける。自分という枠を超える役柄や世界観を、無限に創造することができる――。自身のキャリアをパラレルに広げていった原動力は、そんな「見たことがない世界」への渇望に他ならない。

「新しい世界を表現するには、よい俳優が必要です。養成所を立ち上げたのは、次世代の俳優たちに世界で通用する演技を学んでほしかったからです。また、小さい頃から書くことが好きで、湧き上がるイメージや思い、心の声を作詞をすることで表現もしてきました。そんなふうにしていつのまにか、手掛ける仕事がどんどん広がっていったんです」

奈良橋陽子
1947年生まれ。キャスティングディレクターとして、「ラストサムライ」「SAYURI」「バベル」など多数のハリウッド映画の製作に関わる。外交官だった父親の仕事の関係で、5歳からカナダに渡り、16歳で帰国。国際基督教大学を卒業後、ニューヨークの演劇専門学校で学んだ。キャスティングの他にも、作詞、演出、映画監督、俳優養成所アップスアカデミー主宰など多方面で活躍している。

(加藤藍子)

管理職・ミドル世代の転職なら――「エグゼクティブ転職」

5分でわかる「エグゼクティブ力」
いま、あなたの市場価値は?

>> 診断を受けてみる(無料)

「エグゼクティブ転職」は、日本経済新聞社グループが運営する 次世代リーダーの転職支援サイトです

NIKKEI 日経HR


出世ナビ 新着記事

ALL CHANNEL