出世ナビ

キャリアの原点

渡辺謙をハリウッドへ 奈良橋陽子氏、配役の目利き力 キャスティングディレクター 奈良橋陽子氏(上)

2018/11/6

以後、ハリウッドでの人脈を介して、日本人俳優のキャスティング依頼が舞い込むことが増えた。「ラストサムライ」製作に当たり、エドワード・ズウィック監督が来日した際には、真田広之氏ら殺陣に通じた俳優を体育館に集めて「殺陣ショー」を企画し、売り込んだこともある。

■「やってみないと気が済まない」

俳優養成所を主宰し、次代のスター育成にも力を入れる=奈良橋陽子氏提供

2014~15年に放送されたNHK朝の連続テレビ小説「マッサン」では、選考用の演技映像を見て「芯の強さを確信した」という米国人俳優のシャーロット・ケイト・フォックス氏を主演に推し、才能の「逆輸入」にも一役買った。

以来、通訳やキャスティングだけでなく、演出、作詞、俳優養成所の主宰なども手掛ける。今風の言い方なら「パラレルキャリア」の先駆けだ。奈良橋氏は「肩書の多さにはよく驚かれます」と笑いつつ「やりたいと思ったことは、やってみないと気が済まない。やってだめだったらどうしよう、という発想がそもそもないんです」と言い切る。

その性格は親譲りだという。外交官の父親は「計画を立てない旅行」を好んだ。母親も1930年代、主な交通手段は船と汽車という時代に、女性一人でのヨーロッパ渡航を決行した冒険家精神の持ち主だ。同時に「子どもであっても、自立した個人として尊重する姿勢は両親ともに一貫していた」と振り返る。

5歳の頃、父親のカナダ駐在が決まったときのことを、奈良橋氏は鮮明に覚えている。

「母は私に『一緒に連れて行ってもらえるか、パパに聞いてごらん』と促しました。言われるままに尋ねてみたら『OK!』と快諾をもらって。両親の間ではもちろん、一緒にカナダへ行くということで話がついていたはずです。それでも、一方的に『行くことになった』と告げることはしなかった。あえて自分の意思として『連れて行ってほしい』と伝えさせたんです」

「今振り返れば、私の自立心や好奇心をエンパワーメント(力を付ける)したいと考えた両親の作戦だったのだろうと思います」

10代前半を過ごしたのが、ケベック州モントリオールにある私立トラファルガー女子学校だ。カナダの教育制度は州によって異なるが、初等教育を終えた後、「セカンダリースクール」に通う。トラファルガー女子学校もその一つで、幅広い年代の生徒が共に学ぶ環境だった。

出世ナビ 新着記事

ALL CHANNEL