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キャスティングディレクターの奈良橋陽子氏(東京・神楽坂のアップスアカデミーで)

キャスティングディレクターの奈良橋陽子氏(東京・神楽坂のアップスアカデミーで)

「ラストサムライ」や「バベル」など、名立たるハリウッド映画へ日本人俳優を送り込んできた、キャスティングディレクターの奈良橋陽子氏。演出家や作詞家、俳優養成所主宰など、昭和の時代から「パラレルキャリア」を実践してきた。通底するのは「演じること」への強い関心。親譲りの冒険家精神で道なき道を切り開いてきた。

きっかけはスピルバーグ氏との共同作業

キャスティングディレクターという職業を知っているだろうか。映画監督やプロデューサーと協力しながら、映画・ドラマに出演する俳優を選ぶ仕事だ。ハリウッド映画の場合、候補になるのは米国の俳優だけではない。オーストラリア、英国、ニュージーランド、そして近年では日本――。英語を話すすべての俳優が対象となる。

「ラストサムライ」の渡辺謙氏、「バベル」の菊地凛子氏などが国際的に高い評価を受けたことは記憶に新しい。彼らを見いだし、ハリウッドへの橋渡しをしたのは奈良橋氏だ。日本人俳優のハリウッド進出が増えてきたのは、ここ15年ほどのことだという。言葉の違い以上の「壁」が、そこにはある。

世界中から才能豊かな人材が集まるハリウッド。役を勝ち取るには、監督をはじめとする製作陣に「この俳優でなくてはならない理由」を納得させる必要がある。奈良橋氏は30年以上、海外と日本を行き来しながら、製作現場で求められる人材を肌感覚で理解してきた。双方のエンターテインメント界を知る存在として、監督らが持つ役柄のイメージに、ときには意見もぶつけながら「交渉」する。

この仕事を始めるきっかけになったのは1980年代、スティーブン・スピルバーグ監督の映画「太陽の帝国」のオーディションで通訳を務めたことだ。第2次世界大戦下、日本軍が中国へ侵攻し、そこに暮らしていた英国人の少年が収容所へ送られるストーリー。日本兵役をキャスティングする仕事だった。

「オーディションで、ある俳優は軍服を着て敬礼し、完璧な日本兵ぶりを見せました。でも後でスピルバーグ氏に聞くと『ああいう感じだと、それ以上を想像できなくなる』と。別の俳優はあえて監督の過去の作品を批判して自分を印象付けようとしましたが、結果は大失敗でした。監督によって選び方は異なりますが、キャスティングがどういう息遣いで決まっていくものなのか、少しずつ理解できました」

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