澤上篤人(以下、澤上) 今回は日経マネー編集部からの提案で、一番やりたくないテーマが飛び込んできた。編集部や読者の皆さんにとっては、投資教育とか金銭教育あるいは「子供に、どう投資を教えていくか」は興味津々のテーマなんだろう。だが、我々からすると全然つまんないの一言。
なぜ、つまらないかってところを今月は草刈と話し合ってみよう。
誰が投資を教えられるの?
澤上 これからの日本にとって投資教育の大事さは、よく理解できる。「親から子へ伝える投資」という編集部からの依頼も、丁寧に考えたいテーマである。
問題は、日本で誰が本物の投資教育ができるかだ。もちろん、多くの人々が投資教育や金銭教育に携わっておられる。皆さん、実に真面目に取り組んでいて、何らケチをつける気はない。
とはいえ、本当の意味での投資教育となると、どうも心許ない。つまり、彼ら彼女らが実際に投資でどれだけの資産を築いてきたかだ。その点が問われると、果たしてどこまで自信をもって答えられるのか。でないと、実体験のない絵空事を言っているにすぎない。
草刈貴弘(以下、草刈) 最近、日本でも投資教育に取り組んでいる事例を幾つか見ます。高校生や大学生をターゲットにしたSTOCKリーグ、小学生をターゲットにしたものまで。確かに経済に興味を持つこと、広く世の中を勉強するきっかけになるのであれば良いと思います。
ただ、よくある枕ことばが「投資は誰も教えてくれない」「欧米では早くから教える」というもの。でも結局はいくら教え込んでも自分から学ばなければ身に付かないので、英語が話せない人が多いのと変わらない。欧米を例に取っても、教わるのは仕組みであり本当に理解しているかは人それぞれ。ですから投資教育というものをすべしとはどうしても思えないんです。

澤上 きつい言い方で申し訳ないが、投資の方法やリスク・リターンなどは誰でも語れる。しかし、実際に投資行動できるかとなると怪しい。例えば投資教育の最後に「投資はリスクがあります」とか、「後は自己責任ですよ」が決まり文句となっている。そう言われた瞬間に、せっかく投資をしようと思った人も、「やっぱり、やめておこう」となりかねない。我々なら「投資はリスクを取ること。大事なのは、どういう具合にリスクを取るかです」と逃げないけどね。
草刈 だから「親から子へ」というのがポイントかもしれませんね。投資教育となると、そもそも投資で成功した人が教える側にどれだけいるのか、ということになります。もちろん、成功した人が教えたからと言っても、教わった方が必ずしも成功するわけではない。時代が変われば手法も考え方も、経済の動き方も変わってくる。今の常識を教えたって10年後には役に立たない非常識になっているかもしれないのですから。