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私のリーダー論

社外で磨いたバランス感覚 日野自社長の学び人生 日野自動車の下義生社長(下)

2018/10/25

――若手社員のころの経験で、現在の糧になっていることは何でしょう。

「開発の現場にいたころ、技術担当の副社長はエンジンの大家と呼ばれる人で、大変厳しかった。技術会議という技術部門では最も重要な会議があり、副社長からあらゆる技術について『それは世界最高の技術か』って聞かれるんですね。たった一行の質問なんですけど、結構深い言葉で、それに答えるためにはほかの技術を知っていないといけないんです」

■豪華バスで大赤字 技術魂とコスト意識を学んだ若手時代

「私がある商品企画で『ここの機能はちょっと他社に負けています。でも顧客にとって重要な機能であるここは勝っていて、トータルでは競争力があります』と説明したら、ものすごく怒られました。『最初の企画から負けている企画なんてありえない!』って。百パーセント納得はできませんでしたが、その考えも一理あって、確かにこれでいいと思った瞬間にその先の技術は探さなくなってしまう。先端技術の日野といわれたルーツがここにあったと思います」

「とはいえ、失敗もありました。世界初とか最新の技術を盛り込めば顧客が喜んでくれるはずだと思い、バブル期には、車内の4つのゾーンごとに温度設定ができる空調システムといった、最新技術を盛り込んだ豪華観光バスの開発を手掛けました。しかし、コストもかかって大赤字。顧客からもなかなか受け入れてもらえない。『顧客は今の改善点は言えても、将来の改善点は言えない』という考えは必ずしも間違ってはいないけど、それだけじゃダメだということを失敗しながら学んでいきましたね。今は社内でも、何のために日野という会社があるのかを考えながら仕事をしてほしいと伝えています」

■トヨタ社長にもほめられたバランス感覚

――米国法人の上級副社長として駐在もしています。経営の仕方で違いとして感じたことはありましたか。

米国法人に上級副社長として駐在していたころ(左から2人目が本人)=日野自動車提供

「一緒に仕事をしていた部長クラスの米国人社員がある日突然、解雇になったことがあり、経営の厳しさを目の当たりにしました。最も大きな違いを感じたのは、仕事のやり方がダイナミックなことです。米国は日々の仕事は日本に比べると大ざっぱで、事前の準備が足りないこともあるのですが、それでもとりあえずできる人だけで前に進もうという勢いを感じました」

「リストラなど厳しい局面もありましたが、当時、日本から赴任していた米国販社の社長は相手の立場で物事を考えられる人でした。来客があったときに、まるで米国人のように米国のよいところをほめ、相手が日本人なら米国を好きになってもらおうとする。とてもウエットな部分ですが、こういうことも人の心を動かすんだなと学びました」

「私の会社人生はトヨタと日野のハイブリッドでもあるし、米国駐在も経験したので米国のダイナミックなやり方と、和を乱さないアジア流のチームづくりの良いところを学べたと思います。トヨタの豊田章男社長からほめられたことはほとんどありませんが、一度だけ『リーダーシップとバランス感覚がいい』と言われたことがあります」

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