IPO銘柄 多額の借金背負う企業に注意(苦瓜達郎)大和住銀投信投資顧問シニア・ファンドマネージャー

写真はイメージ=123RF
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「ファンドが企業に適度な借り入れをさせて再上場に持ち込むのは立派なビジネスだが、問題なのは借入金が過大なケースだ」

米国発株安の余波が続いています。株価の変動率が高い状態が続くようだと、これまで世界的にも堅調だった新規株式公開(IPO)市場への悪影響が懸念されます。日本では今のところ、IPO延期などの動きは出ていないようですが、注意が必要でしょう。

最近のIPO市場において、気がかりなことがもう一つあります。買収ファンドが保有する企業のIPO時における財務戦略です。不当に多額の借入金を企業に負わせるファンドが目立ち、問題だと思っています。私の見方ではこの傾向は4年前から顕著になってきました。

多額の借り入れをし、高値で投資先を移動

全体的に見ると、日本の上場企業は取っている事業リスクの割に自己資本が過剰な傾向があります。従って、資本効率の低さから株価が割安に放置されている企業を買収し、余剰資金の吸収後、適度な借り入れを行わせて再上場に持ち込む、というのは立派なビジネスだと思います。問題は借入金の額があまりにも大きいケースです。

ファンドが投資先に借金を負わせるには、新会社を設立してそこに借り入れをさせ、投資先の株を高値で買わせた後に旧来の会社と合併させる、という手順が取られます。投資先の評価額と、もともとの資産額の差は会計上「のれん」という名の資産になり、新会社の自己資本はそのぶん多めに表示されます。従って、多額の借り入れを行い、高値で投資先を移動させた場合には、のれんも多額になる傾向があります。

そもそも、私はのれんをあまり資産として認めていません。企業取材のときには、資産や負債の状況をできるだけ簡略にまとめた形でノートに残しておきますが、のれんは資産ではなく自己資本から引く形で書いています。企業が自力で築いたのれんに関しては資産として認識しない以上、買収した企業の分だけを資産扱いするのはバランスが悪いと考えるからです。

「のれん」が自己資本を上回る企業も存在

ファンド放出企業の中には、のれんが自己資本を上回る企業も存在します。あくまで私の見方ではありますが、こうした企業は「実質債務超過」ということになります。リーマン・ショック程度の不況ではびくともしないくらいの収益基盤を持っている企業でもない限り、「実質債務超過」というのは許されることではありません。

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