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ビジュアル音楽堂

シュツットガルト・バレエ団来日 感情伝える劇的舞台

2018/10/20

「オネーギン」の音楽も独創的な構成だ。クランコ氏がチャイコフスキーのオペラ「エフゲニー・オネーギン」のバレエ部分を振り付けた経験から触発された純バレエ作品にもかかわらず、このオペラの音楽は使用していない。代わりにピアノ曲集「四季」の「6月・舟歌」、管弦楽曲「幻想曲《フランチェスカ・ダ・リミニ》」などチャイコフスキーのほかの楽曲を組み合わせて使っている。チャイコフスキー作品のハイライト組曲ともいえるこのバレエ音楽は、ドイツの作曲家クルト・ハインツ・シュトルツェ氏の編曲による。

悲劇で終わる独特のクランコ版「白鳥の湖」

主役のオネーギンを務めるフリーデマン・フォーゲルさんは「とにかく高くて難しいリフトが多い。背丈が1メートル90センチある私の場合、相手役は持ち上げられると3メートルくらいの高さで演技することになるので、信頼関係がないとうまくいかない。一度、アリシアを持ち上げて踊っているときに舞台上のベッドの角に彼女がぶつかってしまったこともあった」と苦笑いする。アマトリアンさんは「確かにクランコ氏の振り付けは難易度が高いが、うまく踊れると不思議と簡単にみえる。すべての動きが溶け合って、思いが伝わる美しい舞台になる」と付け加えた。

インタビューに答えるシュツットガルト・バレエ団のタマシュ・ディートリッヒ芸術監督(東京・上野の東京文化会館)

もう一方の演目、チャイコフスキー作曲の「白鳥の湖」は不動の人気を誇る古典バレエ作品だが、クランコ版では新しい解釈を加えている。最もよく知られる物語のラストでは、悪魔によって白鳥に姿に変えられていたオデット姫の魔法が解け、ジークフリート王子と幸せになる。ところがクランコ版は、悪魔の呪いによって王子は息絶え、オデット姫は白鳥の姿に戻ってしまうという救いのない悲劇で幕を閉じる。王子を演じるフォーゲルさんは物語が帰結するドラマチックな「第4幕が一番の見せ場」と言い、「ハッピーエンドではないところが、現実の世界に通じていてより共感をもたらすと思う」と解説する。

こうした独特の世界観を持つクランコ氏の作品が生まれ、愛されるようになった背景には、シュツットガルトの自由で新しいものを受け入れる気風があった。クランコ氏が死去したあともシュツットガルト・バレエ団からは、彼の薫陶を受けたジョン・ノイマイヤー、イリ・キリアン、ウィリアム・フォーサイスの各氏と、次世代の大物振付家たちが輩出された。ディートリッヒ監督もその伝統を受け継ぐ。

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