今だから気付くことですが、学生からみた課題って小さなことなんです。学生が自由にアイデアを考えると、だいたい傘の貸し借りサービスとか、身近な課題をビジネスにしてしまうので大きくなりにくい。学生のサークル活動の延長だったなと反省するところです。

「エジソンより失敗したい」。ブログにこう書いたのは同級生が就職していった頃です。事業に失敗したとしても諦めずに続けることによっていつか自分も成功できるはずだと、自分に言い聞かせるように書いていました。

これは“学生起業家あるある”なのですが、大学3年生ぐらいまでは同級生の間で、起業していることに対する評価が高いんです。「すごいね」と言われる。ところが4年生から新卒1年目の時期になった途端、外資系コンサルなどの人気企業に内定・就職している人への評価が高くなり、飲み会で「石川まだ会社やってんの?」と聞かれるわけです。そこで就職するのか、続けるのかが1つの分岐点でした。

ビジネスで試行錯誤する一方、大学の授業ではデータ解析や機械学習について学んでいました。起業するからにはコンピューター系の知識をしっかりつけておきたいと考えていたからです。

AIの技術を教えるオンライン学習サービスの事業計画をVCと一緒に作り上げた。

あるとき知人の紹介で、ヘルスケア企業からビッグデータ解析システムを開発してくれないかと頼まれ、受託開発をすることになりました。そのとき、学生に頼むぐらい人工知能(AI)の分野は人材が不足しているのか、と思ったのです。

受託の仕事もヒントになり、AIに関連する10個の事業案を考えてVCの方に見てもらいました。AIを使った健康系アプリなど色々なアイデアがありましたが、そのなかで一番確度が高そうな事業を選んでもらったのが、今のエンジニア向けのオンライン学習サービス「アイデミー」です。

このとき、「捨てる決断」をしました。いくつかのビジネスの失敗を経て、自分には事業を当てる才能はないんだなと思ったのです。もちろん原案は自分ですが、どういう事業を実際にやるのかはVCや投資家など市場の感覚がある人に選んでもらって、それを自分たちでスケールしてみようという方針を決めました。

3年間、僕は「起業家」のイメージにとらわれすぎていたという反省があります。起業家たるもの、他の人のアドバイスを聞いちゃいけないと思っていました。しかし逆に、色々な人のアイデアを聞いてやる方がうまくいくことに気付いたのです。

アイデミーはエンジニアが誰でも簡単にAIなどの先端技術を学べるように工夫しています。ある意味、サレジオで理想の先生に出会って抱いた先生になりたいという夢と、同じく高校時代に興味と憧れを抱いたお金を回す仕事、すなわち経営者になりたいという夢を、同時にかなえられたわけです。「社会とテクノロジーを繋(つな)げる」というのが当社のミッション。サレジオで育んだ思いも、今のミッションにつながっているのかもしれません。

(安田亜紀代)

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