後継者いない 中小企業はファンド注目を(安東泰志)ニューホライズンキャピタル取締役会長

しかし、その一方で、M&Aの成立には相応の時間を要する。買い手候補先との間で、雇用の維持や経営方針について満足な条件を引き出せない可能性もあろう。

会社の従業員は近隣の同業他社には売却されたくないという思いが強い。万が一、M&Aが成立しない場合、同業他社に機密情報が漏洩してしまうだけになる恐れがある。このように、事業承継のいずれのパターンとも長所と短所がある。

しかし、投資ファンドが関与することで解決できる問題点は多い。例えば、MBO、EBO、MEBOなどを考える際に問題になる資金調達は、当該事業に収益性がある限り、投資ファンドが提供する資本性の資金と銀行借り入れの併用によって解決できる可能性が高い。

ファンドなら豊富な人材やノウハウを投入

その場合は、先代経営者が差し入れていた担保や保証も外れる。その上、投資ファンドはその後も豊富な人材やノウハウを投入して、新経営者をサポートしてくれるはずだ。

また、M&Aで第三者に株式を売却する際も、投資ファンドがいったん受け皿になることによって、迅速な株式譲渡が可能となる。しかも、同業他社への売却ではないので、機密情報の漏洩などの心配もない。投資ファンドは社内または社外からの新経営者をサポートしつつ、時間をかけて最適なスポンサーにバトンタッチする役割を担う。

17年施行された「地域未来投資促進法」はまさにこの点に着目している。主な支援措置の一つとして地域経済活性化支援機構や中小企業基盤整備機構などによるファンド創設・活用がうたわれており、これら機構による民間投資ファンドへの投資も進んでいる。事業承継支援において、地域金融機関と民間の投資ファンドの協力関係が一層深まることを期待したい。

安東泰志
1981年に三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行、88年より、同行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。2002年フェニックス・キャピタル(現ニューホライズンキャピタル)を創業。三菱自動車など約90社の再生案件を手掛ける。東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。事業再生実務家協会理事。
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