退職直後は主にカナダで過ごし、中南米にも旅行するなど、1年間はゆっくり過ごした。退職金と貯金が底をつき始めた07年夏にようやく仕事を探し始め、顧客を紹介する業者であるエージェント経由でコンサルティング契約を獲得した。一般的にコンサルの仕事は2~3カ月ごとに契約し、更新していくスタイルだが、このときは3カ月で終了。それと同時に数百万円の報酬が村上さんの口座に振り込まれた。

フリーランスの醍醐味を知る 半年休んで半年働く

「仕事の条件で妥協しないことが大切」と話す

そこで次の仕事を探すのではなく、村上さんのとった行動はなんとオーストラリア行きの航空券を買うことだった。「このときに気付いたんです。フリーランスという働き方の醍醐味を」

数カ月コンサルの仕事をして貯金する。その軍資金で世界を旅してW杯やオリンピックを観戦する。お金が尽きたらまた仕事を探すというスタイルだ。実際に08年に従事した中国でのプロジェクトで1000万円以上を稼いだ村上さんは、10年の南アフリカW杯に向けて32カ国の出場国を回る「世界一蹴の旅」を実行した。

サラリーマンからみると「そんなに仕事がすぐに見つかるのか」という疑問も出てくる。村上さんによると、各業界でフリーランス向けのエージェントが存在し、企業もフリーランスを活用するケースが増えている。クラウドソーシング大手、ランサーズ(東京・渋谷)の調査では、国内のフリーランス人口は1000万人を超え、経済規模は20兆円にのぼるという。

村上さんは大企業に照準を定めて条件を妥協せずに仕事を探すという方針を徹底。時間あたりの収入はサラリーマン時代の倍になったという。単価が上がった分、働く時間を半分にして世界各地を回った。

もちろん、うまくいくことばかりではない。「貯金が底に近づいたときに一度だけ条件を妥協し、自分の専門と少し違う領域の仕事を請け負いました。そういう案件に限って、クライアントとの関係がうまくいかず、深夜まで残業。結局4カ月で契約を切られてしまいました」

村上さんはコンサルタントの中でも、「PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)」と呼ばれる特殊な分野を専門とする。大企業の部長クラスの直下につき、複数のプロジェクトの進捗やリスクの管理をしてサポートする仕事だ。「私の仕事の単価は実は06年から上げていません。マネジャークラス以上の仕事をしようと思わないからです。例えば新規事業を提案したり、経営を立て直したりするような役員クラスの仕事には手を出さない」。プロジェクト管理という専門領域を磨いていくと「現場に行くたびに効率が上がり、仕事が楽になる」というメリットもあると強調する。

しかし、一気に稼いで旅に出る方法には弱点もある。W杯や五輪に行くときに契約を切るか中断しなければならないからだ。これを理由に面接で断られることもあったという。仕事探しには時間もかかる。1カ月プロジェクトを抜けてもまた同じ仕事に戻れる方法がないか、ということはずっと悩みの種だった。それを解決したのが、3年前、あるクライアントと結んだ「フリーランスの最終形」と呼ぶ契約だ。

稼働率60%の「フリーランス最終形」

このクライアントでの仕事の業務量が増えてきたときに、アクセンチュア時代の後輩にサポートについてもらったことがあった。そして繁忙期が過ぎた後、村上さんはクライアントにある提案をした。「2人とも稼働率を60%に減らして、2人で補完し合うスタイルはどうか」。それまで一定の成果を上げて信頼を得ていたのでこの提案はすぐに認められた。

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