トヨタ・IHI・コマツも登用
企業価値向上のためにも女性役員の増加は重要な課題だ。安倍晋三首相は13年「役員(執行役員を含む)に1人は女性を」と経済界に要請。今回の調査で女性役員が1人以上いる企業は、執行役員まで含めると344社だった。
企業も徐々に対応。18年1月にトヨタ自動車で生え抜き女性初の役員が誕生。1989年に女性総合職1期生として入社した加古慈さん(51)だ。高級車「レクサス」開発責任者で常務役員に。就任後の会見で「目的を見失わないことが大切」と力を込めた。
女性役員で目立つのが社外取締役での弁護士などの起用だった。そんななか、6月に造船・重機業界のIHIでは82年に研究者として入社した水本伸子さん(61)、建機メーカーのコマツでも前人事部長の浦野邦子さん(61)が生え抜きで取締役になった。
透明性のある組織運営など企業統治(コーポレートガバナンス)の面からも、女性役員の起用は喫緊の課題。東京証券取引所は6月、コーポレートガバナンス・コードを改訂し、外国人や女性の起用を促す。
「子供いる」35%、専業主婦経験者も
回答者から浮かんだ女性役員の横顔は既婚者が51.9%。子供がいる人は35.1%で既婚に限れば53.8%と半数を超える。社内の役員の生え抜き比率は47.1%。中途入社組には専業主婦経験者が7人いた。
6月、中堅デベロッパー、サンヨーホームズの社外取締役に就任した経営コンサルタントの田原祐子さん(59)も元専業主婦。大学卒業直後に結婚。「主婦は評価されない。働いて自立したい」と2人の子供の幼稚園入園後に働き始めた。人材派遣会社、住宅経営のコンサルティング会社などを経て98年に38歳でベーシック(東京・千代田)を起業し独立した。
独立後は年300日以上の出張もこなし省エネ住宅の普及に奔走。さらにコンサルタントとしてキッチンや収納の使い勝手の向上など「生活者視点を取り入れる」手法で住宅や住設機器などの営業拡大に貢献し手腕を発揮した。「社外取締役としても、生活者の視点を大事に企業価値向上に貢献したい」と話す。
[日本経済新聞朝刊2018年10月15日付]