後進の育成には「修羅場経験」が重要
企業の中で充実感のある難しい仕事は無意識のうちに男性に渡されがちだったが、2016年の女性活躍推進法の全面施行以降、女性にも重要な仕事を任せようとの機運は急速に高まりつつある。「ダイバーシティのいいところは、潜在能力は高いがチャンスを与えられなかった人が引き上げられ、力を発揮できること」(リクルートワークス研究所の石原主任研究員)。男性中心の企業社会で黙々と職務に励んできた女性たちの実績が公正に評価され、役員として活躍する道が開け始めた。
さらなる育成に向け、石原主任研究員は「辞めたくないと思えるほど面白い仕事の体験」と「能力発揮のチャンスを運んできてくれる上司や、頑張れと引き立ててくれるスポンサー」が必要だと説く。女性の社内役員が自身が役員になれたと思う要因(複数回答)も「引き立てたり機会を与えたりする上司の存在」(57.9%)がトップだ。
さらに後進女性を役員レベルに育てるうえで重要なことを聞くと、「早い段階で複数職場、職種の経験を積み変化への適応力を養うことと修羅場経験を積むこと」(執行役員・50代)などが代表的な声。「失敗」の大事さを説く人も多い。そこから「前向きに向かうバイタリティー」(同・50代)を忘れず、挑戦を重ねていくと視野も人脈も広がるとの助言が目立つ。妊娠・出産といったライフイベントを考慮し、その点でも若いうちからの多様な経験を推す人が多い。
生産年齢人口が減るなか、女性活躍の推進は必須。女性役員誕生を一過性で終わらせてはならない。「(人材輩出の)パイプラインを太くし脈々とつなげていくことが大切」と石原主任研究員は強調する。