少々専門的になるが、アルデヒドというのはアルデヒド基(-CHO)という構造を持つ物質の総称だ。このアルデヒド基には、酸素と炭素の二重結合したカルボニル基(-C=O)があり、反応性が高くたんぱく質と結びつきやすいのだ。そして、それによりたんぱく質がAGEs化して変性・劣化していくのだという。
なるほど、糖化という反応自体に、アルデヒドが深く関わっていたのだ。こう聞いて、はたと気がついた。過去の記事でも繰り返し説明してきたが、お酒の中に含まれるアルコール(エタノール)は、体内でアルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドに変換される。このアセトアルデヒドがたんぱく質とくっついて悪さをするのだろう。
「その通りです。アルコールが体内で分解されて生じたアセトアルデヒドも、同様にたんぱく質と結合し、アセトアルデヒド由来のAGEsができます。つまり、アセトアルデヒドには、AGEsの生成を促進してしまうという作用があるのです」(八木さん)
左党にとっては、「わー!」と耳をふさぎたくなるお言葉(泣)。
お酒を飲む機会が多い人ほど、体内にAGEsが蓄積される
ということは、当然、お酒をたくさん飲んで体内にアセトアルデヒドができる人ほど、糖化が進み、AGEsが生成されるということだ。
実際、八木さんは、同志社大学の糖化ストレス研究センターの研究から、実際に飲む頻度が高い人ほどAGEsが体内に多く蓄積していることが確認されたと話す。
「私たちは、皮膚のAGEsの蓄積と生活習慣の関係を確認するため、日本人244人の生活調査とAGEsの測定を行い、結果を解析しました。生活習慣の中で相関関係が認められたのが、喫煙経験、飲酒習慣、睡眠時間です。飲酒習慣については、下のグラフのように、飲酒頻度が週4日以上のグループは、週3日以下のグループに比べてAGEsの蓄積量が高くなりました。ただ、現時点では飲酒量との関係は明確になっていません」(八木さん)
中でも最も注意しなくてはならないのが「酒を飲んで顔が赤くなる人」、つまりアセトアルデヒドを分解するALDH2(アセトアルデヒド脱水素酵素)の活性が低い人だと八木さんは話す。
「お酒を飲んで顔が赤くなる人は、アセトアルデヒドの分解能力が低いため、体内においてアセトアルデヒドにさらされる時間が長くなります。そのため赤くならない人に比べ、AGEsの生成が促進されやすくなります。これにより体内のたんぱく質の変性が進み、老化やさまざまな疾患のリスクが高まってしまうのです」(八木さん)
前回「のどに刺激のある強い酒 飲み続けた人の末路は?」でも紹介したが、お酒を飲んで顔が赤くなる人(フラッシャー)は、やはり飲酒による悪影響を受けやすいのだ。該当する人は特に注意する必要がありそうだ。
こう聞くと、顔が赤くならない人は、「私は、顔が赤くならないから大丈夫」と思うかもしれないが、そう都合よくはいかない。結局、飲んで顔が赤くならない人であっても、飲む量が多くなるとアセトアルデヒドの影響は避けられない。
「二日酔いの人、日常的に多量飲酒をする人もまた、アセトアルデヒド由来のAGEsの生成が促進されます。ALDH2の活性が強い人はアセトアルデヒドの分解が早いとはいえ、量を飲めばアセトアルデヒドにさらされる時間が長くなるのでリスクは高まります。顔が赤くならないから安心ということではありません」(八木さん)
そうか、やはりお酒の飲み過ぎは糖化リスクを高めるのだ。
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八木さんは分かりやすい言葉でこうまとめてくれた。「多かれ少なかれ、加齢とともにAGEsの蓄積は増えていきます。これは生きていく限り仕方のないことといえます。そこに『飲酒』という負荷をかけることで、その蓄積の速度が早まるわけです」(八木さん)
では、具体的にどんな対策をすれば、糖化のリスクを下げることができるのだろうか? やっぱり「適量」しかないの? そして、お酒以外の対策も気になるところだ。
こちらについては次回のお楽しみということで。次号を刮目(かつもく)して御覧あれ!
(葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト)

[日経Gooday2018年10月5日付記事を再構成]