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老化を促進させる「糖化」 実は飲酒と密接な関係が… 糖化と飲酒【上】

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2018/10/18

「糖化が進行していくプロセスでAGEs(糖化最終生成物)という物質が生成されます。AGEsはさまざまな経路を経てつくられ、一口にAGEsと言っても、論文に報告されているだけでも数10種類あり、実際のところ100種類以上あるともいわれています。このAGEsこそ、老化を促進させてしまう厄介な物質なのです」(八木さん)

老化を促進させる!? 何ともにくったらしい物質! では具体的に、糖化が進み、AGEsが多く生成されるとどんな悪影響が出てくるのだろうか。

「AGEsの弊害の一つに、たんぱく質の硬化があります。AGEsはたんぱく質同士を結合させ、『悪玉架橋』と呼ばれる厄介者を体内につくってしまうのです。悪玉架橋ができると可動性やしなやかさが失われ、硬化してしまいます。さらに、体内には、AGEsをキャッチするレセプター(受容体)が存在し、そのレセプターがAGEsをキャッチしてしまうと炎症を起こすのです。このようにして、体内のさまざまな臓器の機能が低下していきます。これがいわゆる『老化』ということになります。これがさらに進むと、やがてさまざまな病気につながるのです」(八木さん)

■肌の弾力が低下、骨のコラーゲンも硬化して骨折しやすくなる

糖化の話を聞いて一瞬でも「おいしそう」なんて考えた自分が情けない…。想像以上にAGEsはおっかない存在ではないか。聞くのをためらってしまうが、AGEsの生成・蓄積により、具体的にどんな老化現象や疾患が起こるかについて八木さんに聞いてみた。

「見た目に密接に関わる“肌への影響”では、まず肌の弾力が失われます。さらにシワ、くすみ、血色不良など、女性にとってはありがたくない作用が肌表面に現れます。肌の弾力が低下する原因はさまざまありますが、糖化の影響が大きいといわれています。私たちの研究でも、糖化ストレスにさらされている糖尿病患者は皮膚の弾力が失われやすいことが確認されています」(八木さん)

2型糖尿病患者と健常者の皮膚弾力性が加齢に伴って変化する度合いを比較した同志社大学の研究。神奈川県相模原市の北里大学病院の外来患者を対象に測定したデータ。2型糖尿病患者では、健常者に比べて弾力性が下がっている。(データ:J Clin Biochem Nutr. 2008;43(Suppl 1):66-69.)

外からせっせとレーザー治療をしたり、美容液を与えても、いっこうにたるみが改善しないのはこういうことだったのか。ああ、糖化ってホントに恐ろしい。うなだれているところに「AGEsの影響は骨にも及びます」と八木さん。

「AGEsの一種であるペントシジンが、骨に含まれるコラーゲン線維に悪玉架橋をつくると硬化し骨質が低下します。骨は、カルシウムだけでできているわけではありません。3割程度がコラーゲンというたんぱく質でできています。コラーゲンの硬化によって、しなやかさが失われ、たとえ骨量が十分にあっても『骨折しやすくなる』のです」(八木さん)

人の骨に含まれるコラーゲンの加齢変化を調べた研究でも、ペントシジンは加齢とともに増加したという報告もある(日老医誌. 2013;50:213-217.)。高齢者はより注意が必要だ。また関節軟骨のコラーゲンが糖化すると、関節炎にも影響するという。さらに注意が必要だ。

■腎臓や肝臓の機能が低下、認知症にも影響

そしてAGEsは、内臓の重篤な病気を誘発する要因にもなるという。

「腎臓や肝臓といったヒトの臓器はたんぱく質からできています。こうした臓器にAGEsが蓄積すると、内臓機能そのものが低下し、やがて腎不全や肝臓障害といった重篤な病気を引き起こす原因となります」(八木さん)

また、「血管を構成するコラーゲンがAGEsによって硬化すると、柔軟性が失われ、傷つきやすくなります。つまり動脈硬化を進めるのです。AGEsが血管内皮に蓄積することで、脂肪などから成るどろどろの粥状物質(アテローム)が血管壁に生成。これが徐々に肥厚していくと、心筋梗塞、脳梗塞などの発症につながります」(八木さん)

何と盛りだくさんなAGEsの弊害! 加えて「アルツハイマー型認知症の発症リスクも高まる」というではないか。八木さんによると、「アルツハイマー型認知症の患者の脳内には、罹患していない人に比べ、約3倍ものAGEsが蓄積されていたという報告もある」のだという(Proc. Nati. Acad. Sci. USA. 1994;91:4766-4770.)。

■お酒と糖化は関係あるの?

ここまでの八木さんの説明で、糖化がもたらす弊害は理解できた。しかし、ここまでのところで、「糖とたんぱく質」というキーワードは何度か出てきてはいるが、「アルコール(お酒)」というキーワードは、ただの一度も出てきていない。問題は「過剰な糖の摂取」により“余った糖”がたんぱく質と結びつくことであり、アルコールとは関係なさそうに思える。

先生、実際のところアルコールと糖化は関係しているんでしょうか?

「はい、実は、アルコールと糖化は密接な関係にあります」と八木さん。

「先ほど、糖とたんぱく質が結合してAGEsを生成すると説明しましたが、実は、その生成過程の中で中間生成物として『アルデヒド』が生成されているのです。つまり、糖化のプロセスでは、糖からアルデヒドが生成され、それがたんぱく質と結びつくことで、AGEsの生成が進むのです[注1]」(八木さん)

[注1] AGEsの生成経路は複雑・多経路で、実際には糖だけでなく脂質からもAGEsが生成される経路がある。

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