50代になると、「いよいよ老化現象が始まったか!」と気付かされる機会が増える。特に日々実感させられるのが肌。ハリが失われ、シミ、シワが増えてくる。これらの老化現象の主犯の一つとして、よく話題に上るのが「糖化」だ。この糖化、一般に「糖質のとり過ぎ」などが影響しているとされるが、実はお酒とも密接な関わりがあるという。そこで、酒ジャーナリストの葉石かおりが今回は、「糖化ストレス研究センター」という専門の研究機関を有する同志社大学を訪ね、その真偽について直撃した。
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五十路(いそじ)を過ぎて、やたら気になるのはお肌のハリやシミ、シワである。四十路までは何とか重力に耐えていたのに、五十路になるとこうも違うのか?
「アラフィフなんだから仕方ない」で済ませればいいのだろうが、あきらめきれないのが女性というもの。美容皮膚科でレーザーを当てたり、アメリカの皮膚科医が作ったという化粧品を試してみるものの、「焼け石に水」といったふう。
最後は、誰もが加齢には勝てないのだろう。とはいえ、同じアラフィフでも、人によって“見た目”に随分違いが出てくる。石田ゆり子さんや永作博美さんをはじめとして、同じアラフィフながら驚くほど若く見える方がいる一方で、大変失礼ながら実年齢より10歳以上年を重ねて見える方もいる。どうしてここまで差が出るのだろうか。
こんなとき、私がいつも気になるのが「飲酒との関係」である。私は、“飲むのが仕事”で、飲むのが何よりも好き。最近でこそ休肝日を週3回も設けて、節酒に努めるようにしているものの、若い頃の酒量たるや半端ではない。そのツケが今になってきているのでは…と心配でならない。
迷った揚げ句、「肌の老化 アルコール」とネットで検索してみると…、「若返りのために酒をやめよう!」と恐ろしいキャッチが(涙)。ページを開くと「糖化」というワードが目に飛び込んできた。
そういえばこのところ、テレビの健康番組などで「酸化」と並び、よく耳にするのが「糖化」という言葉である。何でも「体がコゲる」とか…。そして、糖化は老化要因の一つで、肌のハリやシワなどにも密接に関係しているという。
しかも、この糖化、体内の血管や内臓、骨などの機能を低下させ、さまざまな病気の原因になるという。つまり、見た目だけでなく、寿命にも関係してくるというのだから聞き捨てならない。
でも糖化って、その名の通り、炭水化物とか甘いものに関係するキーワードで、アルコールとは無関係なんじゃないの? これは一体どういうことなのだろう?
疑問を抱えたままでは酒も飲めない。そこで今回は、「糖化ストレス研究センター」という糖化専門の研究機関を有する同志社大学を訪れ、同大学生命医科学部糖化ストレス研究センター チェア・プロフェッサー教授の八木雅之さんにお話を伺った。
余分な糖がたんぱく質と結びつき、たんぱく質が変質
先生、そもそも「糖化」とはどういう作用のことを指すのでしょう?
「糖化を一言で言えば『体のコゲ』。身近な例を挙げると、パンケーキなどを焼くと表面がこんがりしたきつね色になりますよね。これはパンケーキなどに含まれる糖と、卵や牛乳に含まれるたんぱく質が結びついて起こった現象です。これがまさに『糖化』なのです」(八木さん)
ん? この話だけだと何やらおいしそうなだけで危険要素がないのだが、八木さんによると、この糖化が体の中で起こると大変なことになるらしい。
「体の中で起こる糖化とは、体内の余分な糖がたんぱく質と結びつき、たんぱく質を変性、劣化させていくことです。たんぱく質は、臓器、皮膚、筋肉、血管などをはじめとする体を構成する重要な成分です。つまり、糖化により体を構成するさまざまな要素が劣化していくわけです」(八木さん)
八木さんによると、牛の皮や骨などをブドウ糖溶液につけておくと、それだけで徐々に組織が糖化され、数日で茶褐色に変色し、弾力を失っていくという。
