プロも使う高級ミラーレスが続々 小型軽量かつ高画質
この秋、デジタルカメラの世界ではキヤノン、ニコン、パナソニックが相次いでフルサイズミラーレス一眼カメラ市場に参入したことが話題だ。これまで2013年に「α7」を発売したソニーがほぼ独占していた市場だが、今後は競争が激化しそうだ。フルサイズミラーレス一眼というカテゴリーのメリットや、各社が相次いで参入する理由はどこにあるのか探った。
キヤノン、ニコン、パナソニックが参入
スマートフォンで撮影する人が増えたことなどが要因で、デジタルカメラ市場は縮小傾向が続いている。だが、そんなデジカメの中で拡大傾向にあるのが、搭載している撮像センサーがコンパクトカメラより大きいAPS-Cサイズや、さらに大きく35ミリメートル判フルサイズになるミラーレス一眼カメラだ。
特に35ミリメートル判フルサイズのミラーレスカメラは、画質が良いこともあってプロカメラマンの使用も増えてきた。これまでソニーの独壇場だった市場だが、将来性を考えると無視できなくなってきたこともあり、ニコン、キヤノン、パナソニックが相次いで参入してきたわけだ。
ミラーレス一眼カメラのメリットは、高級機が多いフルサイズ一眼レフカメラと比べ、ボディー内部にレンズから入った光をファインダーに反射させるミラー機構がないため、ボディーを小型軽量化できること。
たとえばニコンのフルサイズデジタル一眼レフカメラ「D850」のボディーはバッテリーとメモリーカード込みで1005グラムある。これに対して同じフルサイズでもミラーレス一眼カメラの「Z7」は675グラムと軽い。また、交換レンズの後端とセンサーの間の距離をフランジバックと呼ぶが、ミラーレスの場合、ここが短くなるので、レンズ設計の自由度が高くなる。
ただしミラーレス一眼カメラにはデメリットもある。センサーからの映像を常に背面の液晶ディスプレーやEVFと呼ばれる小型ディスプレーを使ったファインダーに表示するため、電力消費が大きいことだ。そのため撮影可能枚数が一眼レフカメラよりも少なくなる。また一眼レフの光学式のファインダーに比べ、EVFの見え味がよくないと感じる人もいる。
ソニーのラインアップ広く
先行するソニーの主力は「α7 III」だ。シリーズ3代目の製品で、すでに交換レンズが幅広くそろっている。最高約10コマ/秒の連写性能、被写体の瞳を追尾できるAF(オートフォーカス)性能などが特徴で、ボディーのみの実勢価格は24万8000円前後。ソニーは高解像度モデルの「α7RIII」や高速連写が特徴の「α9」も用意し、価格が下がった従来モデルを併売するなどラインアップが広い。
ニコンとキヤノンは交換レンズを取り付けるマウントを新規に設計して参入した。ただし両社ともこれまで販売してきた一眼レフカメラ用の交換レンズが使えるよう、マウントアダプターと呼ぶボディーとレンズの間に取り付ける変換機器を用意している。こうして自社製品を利用してきたユーザーの取り込みを重視している。
ニコンは高解像度モデルの「Z7」(ボディーのみの実勢価格43万7000円前後)を9月末に発売した。これに続いて11月下旬にはスタンダードモデルの「Z6」(ボディーのみの実勢価格27万2700円前後)を発売する予定だ。口径が大きくフランジバックが短い新マウントを生かした、交換用レンズの展開に期待が集まっている。
キヤノンはスタンダードモデルの「EOS R」(ボディーのみの実勢価格25万6500円前後)を25日に発売する。円偏光フィルター付きやコントロールリング付きなど4種類のマウントアダプターを用意し、同社の一眼レフカメラ用レンズを積極的に活用できるようにしている。
パナソニックも9月末、フルサイズミラーレス一眼を2機種開発し、来年の春に発売すると発表している。いよいよ競争が始まったフルサイズミラーレス一眼カメラ市場。パナソニックも新モデルを発売する来年以降は、競争がさらに激化しそうだ。
(日経トレンディネット ライター 湯浅 英夫)
[日本経済新聞夕刊2018年10月13日付]
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