夫の必要性感じない恋愛脳「精神年齢はたぶん22歳」
アラサー女子 素顔のライフストーリー[真紀さん(仮名)・後編]
都会で働くアラサー女性の、仕事とプライベートのリアルとは? 働くことへの思い、お金の使い道、愛するモノたち、友達でなければ聞けない内緒の話まで。等身大の彼女たちの素顔に、ライターの大宮冬洋さんが迫ります。
◇ ◇ ◇
出版社で働いている真紀さん(仮名、32歳)とは、あるパーティーで知り合った。口数は少ないが愛想はよく、服装はコンサバティブなOL風。婚活パーティーであれば人気が集まりそうな雰囲気の女性である(前編記事は「32歳出版勤務 服装は女子っぽいが中身はおっさん?」)。
しかし、インタビューをお願いして改めて2人きりで会うと、よく話す快活な女性であることが分かる。聞けば、時と場所によってキャラクターが変化するようだ。
「人が多いところだと、口の挟み方が分からないので黙って聞いていることが多いです。職場でもほとんど私語はしません。飲み会でお酒が入ったりすると多少はしゃべるかな。合コンでもしゃべるほうですし、今日みたいに1対1の場合はすごくしゃべります」
話す内容もかなりあけすけなので、聞き手としてもリラックスできる。例えばスポーツジムに通っている理由を聞くと「体重が学生時代より7キロも増えて54キロ。スーツのパンツが入らなくなった」と赤裸々に答えてくれた。
そんな真紀さんは恋愛にも積極的だ。簡単には人を好きにならないが、好きになったら後先を考えない傾向があるという。3年前に一時的に付き合っていたのは1歳年上の既婚者だった。
「カイロプラクティックの先生です。1年以上は単なる客として通っていました。イケメンだなーとは最初から思っていて、体を触られながら雑談をしている間に好意を持ったのかもしれません。恋愛するかどうかは別として、食事に行きたいとは思っていました。あるとき、事務的なことで彼と連絡を取らなければならなくなり、そのついでに飲みに行く約束をしたんです」
それからは毎週のように外で会うようになり、いわゆる不倫関係になった。ただし、仲が深まりそうになったころに彼から「このまま付き合うのは良くないと思う」と別れを告げられた。3カ月ほどの短い恋愛だった。
スポーツジムで出会った男性はバツイチで優柔不断
真紀さんは見た目がかわいらしく、快活な女性だ。一方で、プライベートでは「有名企業勤務のできる女」の部分を出さず、オンとオフをはっきりと切り分けられる。合コンなどで知り合った男性からデートに誘われることも多い。真紀さんは気軽に応じるが、相手を好きになる確率は高くない。
「いいな、と思う場合は1回目のデートで分かります。でも、自分のどこに恋愛スイッチがあるのかは分かりません。今まで付き合った男の人たちに共通点は皆無です。酒の勢いとかはないですし、一緒にいて居心地がいいぐらいでは友達にしかなりません。恋愛は本能としか言いようがないですね」
既婚者との恋愛が終わった後、スポーツジムで出会ったのが8歳年上の雅男さん(仮名)だった。同じレッスンを受けている仲間であり、他の男性は明らかに「おじさん」の外見だが、雅男さんだけは若々しかった。
「身長は175センチ以上あるのに体重は60キロ台。シュッとした外見です。口がうまくて、私にはやたらと話しかけてきました。食事に誘われて、私も嫌な気はしないので『いいですよ』と答えていたのですが、LINEを交換しても日程を決めない。付き合ってから分かったことですが、彼は優柔不断な性格でスケジュールを決めるのが下手なんです」
職場では交渉上手として定評がある真紀さんの仕事ぶりがうかがえる。しかし真紀さんは、男性に仕事ができるか否かは問わない。本能的に好きになれば、後はできるだけ一緒にいるだけだ。
「結婚」「夫」の必要性を感じない
真紀さんには兄と姉がいて仲もいい。8歳年上の雅男さんに違和感を覚えることはなかった。雅男さんは離婚歴があり、前妻との間には子どもがいて養育費を支払っている。
「好きになるのは理屈じゃないんです。条件面でいえば、合コンで会った人の中にもっといい人はいます。彼はやたらに交友関係が広くて、休日は6件も予定を入れていたり。私との予定を直前で変更したりして、イライラさせられることもあります」
さらにいえば、雅男さんは精神的な弱さも抱えている。自分が8歳年上のバツイチで子どももいることを気にして別れを告げるが、1カ月ほど経つと我慢しきれずに連絡をしてくるのだ。それでも真紀さんは雅男さんを見限ることはできない。
「別れていた時期に他の人と付き合いかけたことがありました。私と同じ出版業界の人で、1歳年上、出身も同じく中部で、趣味は野球観戦。未婚です。私もスポーツ観戦は好きなので、条件的には明らかに雅男さんよりも上。でも、告白をされたときに『そこまで好きじゃない』と感じてしまいました」
転勤族の雅男さんは昨年、福岡に転勤となり、真紀さんとは遠距離恋愛中だ。月に1回ペースで会えてはいるが、真紀さんとしては「できれば一緒に住みたい」と思っている。ただし、結婚願望は薄い。
「東京で働いていると、旦那さんの必要性を全く感じないからです。彼から『結婚して福岡に来てほしい』と言われたらと妄想して、困る! と心の底から思いました。私は今の仕事に向いていると思うので、地方で専業主婦やパートをしたくはありません。子どもが欲しいと思ったことは一度もないし……」
実家の両親はかわいい末っ子の真紀さんにも早く結婚して子どもを作ってほしいと願っている。真紀さんも強固な独身主義ではないので、「結婚したらいろいろ言われずに済むかな」とボンヤリ思うこともある。
「精神年齢が22歳ぐらいで止まっている気がする」
雅男さんとの間で結婚が話題になったことがある。生理が遅れ、妊娠の可能性が浮上したときのことだ。雅男さんは真紀さんが結婚して出産したいのかを遠回しに聞くだけで、自分がどうしたいのかは明言しなかった。
雅男さんは優しいけれど「はっきりしない人」なのだ。新たな家庭を築きたいという気持ちはあるものの、リーダーシップを取ることはない。デートのときも「真紀ちゃんはどこに行きたい? 何を食べたい?」と聞いてきて、提案すると喜んでついてくる。よくも悪くも子どもっぽさが残る40歳だ。
「精神年齢が低いのは私も同じです。22歳ぐらいで成長が止まっている気がします。彼とは楽しく付き合っていきたいし、別れるのは嫌です。でも、結婚生活などを具体的に想像できません。頭の中が恋愛脳なのだと思います」
東京で働いていると夫の必要性を感じない、という真紀さんの言葉が耳に残った。友達と遊ぶことに忙しい雅男さんも同じように感じているのだろう。2人は似た者カップルなのだ。
(次回は新たなアラサー女子が登場します)
フリーライター。1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに就職。1年後に退職、編集プロダクションを経て2002年よりフリーに。著書に『30代未婚男』(共著/NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました』(ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる ~晩婚時代の幸せのつかみ方~』(講談社+α新書)など。読者との交流飲み会「スナック大宮」を、東京・愛知・大阪などで月2回ペースで開催している。公式Webサイト https://omiyatoyo.com
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