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食の達人コラム

素材のうまみ引き出す「水塩」 現代版に進化し復活 魅惑のソルトワールド(22)

2018/10/26

刺し身にもよく合う調味料「水塩」(右)

「温故知新」という言葉にふさわしい調味料があります。今回取り上げる「水塩」です。食のジャンルでは「昔ながらのもの」が見直されることが増えています。「発酵食品」「伝統的な和食」「在来野菜」などが有名で、調味料も例外ではありません。ブームになった「塩麹(こうじ)」や「塩レモン」に次ぐ、「温故知新」な調味料の可能性が一番高いのが水塩だと私はにらんでいます。

水塩とは、塩分濃度の濃い塩水のことで、1489年に著されたとされる料理書「四条流包丁書」に登場します。「ウシホ(潮)ヲ汲テ先ズ煎ジテ」と記載されており、海水を塩にならない程度に煮詰めた濃縮海水であったことが分かります。

塩味のある液体調味料といえば、しょうゆを思い浮かべるかもしれません。ですが、実はしょうゆが一般家庭に普及したのは江戸時代後期のこと。それまではこの水塩が、今でいうしょうゆのような使われ方をしていたのです。

かつてはしょうゆのように使われていた水塩(右)

濃縮海水には、ナトリウム以外にもマグネシウム、カリウム、カルシウムなどのミネラルが含まれており、しょっぱさのほかに苦味や酸味が感じられます。また、ミネラルの作用によって発酵や熟成にも関与するため、「週末レシピ Xマスチキン、ジューシーに仕上げる秘密」でもご紹介したように、素材を漬けこんで軟らかくしたり、うまみを引き出したりすることができます。

また、液体状なので、塩の結晶と違ってムラになることなく食材にまんべんなく塩味をつけることができます。使う塩の量を減らすことにつながり、減塩を気にしている人にもお薦めです。さらに、塩が溶けた状態なので料理に加えた瞬間に塩味が決まります。「塩味が足りないなあ」と塩をどんどん加えて、料理がしょっぱくなってしまうという失敗も防ぎやすくなります。もちろん、昔ながらの使い方のように、しょうゆ代わりに刺し身につければ、素材の味わいが引き立ちます。

「水塩」にはこのように多くの利点がありながら、なぜ廃れてしまったのでしょうか。「水塩」は素材のうまみや香りを引き出すのは得意ですが、「水塩」そのものにはうまみや香りがありません。それ自体のうまみや香りが強いしょうゆが普及するとともに、水塩が徐々に使われなくなってしまったのではないかと考えられます。また、清浄な海水を身近で手に入れることが難しくなったということも関係していると思われます。

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