筑波大学の江面浩教授によると、日本では外部遺伝子を導入する形でのゲノム編集育種はほとんど行われていないそうです。江面教授は健康によい成分に富むトマトの新品種などをゲノム編集で作っていますが「ルールができることは実用化の追い風になる」と話しています。

また医療分野では、文部科学省と厚労省が、ヒトの受精卵での遺伝子編集について、基礎研究に限って2019年春にも解禁する方針を決めました。同じ医療分野で遺伝子治療でのゲノム編集については扱いを検討中で、結論が出るまで時間がかかりそうです。

江面浩・筑波大学教授「遺伝子変異の度合い、従来技術より小さい」

ゲノム編集による作物の品種改良に取り組んでいる江面浩・筑波大学教授(つくば機能植物イノベーション研究センター長)に、研究の動向と実用化の見通しを聞きました。

――ゲノム編集によってどんな作物の品種改良をしていますか。

江面浩・筑波大学教授

「主として野菜や果物など園芸作物を対象にゲノム編集による品種改良を試みている。特に力を入れているのがトマトだ。収穫後2カ月近くたっても傷まない持ちのいいトマトや、食べると血圧降下やストレス低減の効果があるGABAというアミノ酸を通常の15倍も含むトマトを作った」

「花が受粉しなくても実をつける『単為結果』という性質を持つトマトも開発しようとしている。遺伝子の改変によってこの性質を導入すれば、栽培農家は人工授粉やホルモン剤を利用して実を付ける作業が不要になり、労力を大幅に軽減できる」

――トマトに注目している理由は何ですか。

「我々の研究室はトマトのどの遺伝子を操作すれば、どのような性質を獲得できるかについて、豊富な情報を蓄積している。この知識を活用できることが大きい。トマトの種子に放射線を当てたり薬剤で処理したりして人為的に突然変異を起こし、その結果生じる新たな性質と遺伝子変異の関係を長年調べてきた。この情報を使って品種改良の研究も進めてきた」

「2012年にゲノム編集の中でも驚くほど効率が高い『クリスパー・キャス9』という技術が登場した。新品種を開発するのにこれを使わない手はないと考えた。国内では農業・食品産業技術総合研究機構が開発した収量の多いイネの新品種が注目されている」

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