「毎日使ってほしい」10万円万年筆、驚きの書き心地納富廉邦のステーショナリー進化形

カスタム845は、軸となるエボナイトを削り磨いて蝋色漆を塗って仕上げる技法で作られた万年筆で、人気も高い。エボナイトの強度を増し美術的価値観もプラスされるこの技術は、1926年にパイロット創業者によって開発された「ラッカナイト」という技法が元になっている。「パイロットらしさとは何か」を考えるところから始まったプロジェクトでも、この技法を取り入れることになった。だが問題はペン先だった。

「新しい万年筆はカスタム845の上位モデルとして、より大型にしようと決めたのですが、その大きな軸にあうペン先がなかったのです」

ペン先は大きいほうが安定性と弾力に富み、万年筆ならではの書き味が楽しめる(筆記幅の太さとは無関係)。パイロットはペン先を「号」で表記するが、カスタム845のペン先は15号。大きな軸を想定していた新製品には合わない。同社の高級ブランドである「Namiki」には20号と50号という15号より大型のペン先を使っていたが、「50号は実用で使う筆記具としては大きすぎ、20号の細長い形状はカスタムシリーズには似合わなかった」。

そこでパイロットは30号のペン先を新たに開発することにする。「万年筆を軸もペン先も含めて一からデザインするのは、パイロットしては27年ぶりのことでした」

万年筆を一からデザインするのはパイロットにとって27年ぶり。その結果生まれた書き心地は、実際に体験すると驚く

全社あげてのプロジェクト

ペン先を開発するに当たってこだわったのは「一般の人に使ってもらえる」ことだという。

「開発に当たって、基準としたのはカスタムシリーズの中では柔らかい『カスタム カエデ』のペン先でした。パイロットには『フォルカン』という特殊な柔らかいペン先もあるのですが、それよりももう少し一般の人にも使ってもらえる方向で考えたのです」

そうやって生まれたペン先だが、実際に軸につけてみると問題が発生した。「金型を作って製造したペン先を軸につけてみると、インクが切れる、書き味が悪い、しなりが弱いという性能的な問題が出てきたのです。そこで金型から作り直し、新しくペン先を作り直すことにしました」

実際の作業ではスタッフ全員を集め、問題点を細かく説明して作り直すという作業を何度も繰り返したという。

「カスタムURUSHIに関しては全社挙げてのプロジェクトだったため2年間で完成しましたが、通常なら5年はかかったと思います」

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