カリスマ書店員が選ぶ 働く女性に寄り添う17冊
心が欲しがる本が見つかる─。そんな理由で支持される書棚をつくる書店店主、書店員。東京と大阪で話題になっている4人に、働く女性の人生、人間関係、お金の悩み、仕事の不安に効く本をセレクトします。
【人生に効く! 4冊】「王道」から外れてしまった? と悩むときに
□このまま結婚しない&子供を持たないかもしれない
□老後、幸せに暮らせるのかどうか不安
□生きることに、心が疲れている気がする
□挫折や喪失の経験から、立ち直れない
人生、案外なんとかなる! 老後を開き直る元気が湧く
『へろへろ雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々』
風変わりな介護施設「よりあい」が、知恵と工夫で3億円以上の資金を集め、特別養護老人ホームを設立するまでを痛快に描く。
子供を産むか産まないかは自分で決めていいと納得できる
『産まないことは「逃げ」ですか?』
不妊治療を経て40代で「産まない人生」を選んだ著者が、その心境に至るまでの実体験をつづったエッセイ。
弱くて不安定な自分でもしなやかに生きるヒントがある
『ラブという薬』
作家・クリエイターのいとうせいこうと精神科医・星野概念の、普段の診療の様子を伝える形でまとめられた対談集。
体の自由を失った青年の軌跡が生きる勇気を与えてくれる
『新版 愛、深き淵より。』
事故で首から下の自由を失った著者が、筆を口にくわえて絵と詩を描き、「深き淵」から1歩前へと踏み出す。
面白い企画は事後承諾! 元アルバイト書店員がカリスマになった理由
アルバイトから正社員になり、その後も、店頭で展開する独自の文芸賞「新井賞」の設立やトークイベントの開催など、組織の枠にはまらない活躍でカリスマ書店員となるなど、"進化"し続ける新井見枝香さん。
「やりたいことはいつも事後報告。けれど、会社にマイナスなことはしないと決めています」。大切にしているのは、顧客との生の対話。「自分が好きな本を手に取っていたら『これすごくよかったんですよ!』と話しかけるし、同じ本が立て続けに売れたら、『何かで見たんですか?』と尋ねる。そうしたやり取りから、売れる本が見えてきます」
三省堂書店神保町本店
住所/東京都千代田区神田神保町1-1
電話/03-3233-3312
営業時間/10~20時
定休日/元日
【人間関係に効く! 4冊】うまくやれないのは、ダメなことですか?
□自分の親とうまくやれない
□恋愛や結婚でつまずいてしまう
□ネガティブな感情を抑えられない
□どうしても許せない人がいる
「相手と自分は別の人間」と認めることで、関係はうまくいく
『生きるとか死ぬとか父親とか』
20代で母を亡くし、「母の人生について何も知らない」ことを後悔した著者が、破天荒な父親と向き合い新たな関係を築くまで。
家族と向き合った著者の正直な言葉に胸を打たれる
『愛と家事』
1982年生まれの著者が、母とのぎくしゃくした関係や離婚について率直につづり、共感を呼ぶエッセイ。
もつれた人間関係の糸を解きほぐす人生の指南書
『生きるのが"ふっと"楽になる13のことば』
精神科医・コメンテーターとして活躍中の著者が、一癖も二癖もある名言から人生に潜む悩みの対処法を解説。
謝られたら許さなければいけない? わだかまる気持ちが軽くなる
『こじれた仲の処方箋』
全米ベストセラー心理学者が、「謝罪」をキーワードに、"あの人"に対して、わだかまる気持ちを解きほぐす。
大型書店の閉店を経験し、行き着いた「街の本屋」の形
2015年に、マネジャーとして大型書店「リブロ池袋本店」の閉店を経験した辻山良雄さん。現在は、東京・荻窪で書店「Title」を営む。置く本はすべて「少しでも読む人の支えになる本や、普段と違うスイッチを押せる本を紹介したい」と、辻山さん自身が選んだもの。「一緒に週刊誌やコミック、実用書など生活に寄り添った本も並べ、『街の本屋』としてありたいと思っています」。
展示やイベントを行うギャラリーやカフェも併設。「お客様と店主が本について話したり、作家が朗読をしたり。本に関することはなんでもやっているような場所にしたいです」。
Title
住所/東京都杉並区桃井1-5-2
電話/03-6884-2894
営業時間/12~21時
定休日/毎週水曜・第3火曜
大学卒業後、数々の書店で書店員や店長を務め、現職。4月に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』(河出書房新社)を上梓(じょうし)した。
HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE
住所/東京都千代田区有楽町1-2-2 日比谷シャンテ3F
電話/03-5157-1900
営業時間/11時~20時
定休日/不定休
【お金に効く! 4冊】お金に悩まない&振り回されない自分になりたい!
□日々の浪費が やめられない!
□毎月の生活費がカツカツでつらい
□生活のために働き続けることに 疲弊している
□将来が不安で、今、お金を使うのが怖い
お金にとらわれない生き方で自由と希望を手に入れる
『魂の退社 会社を辞めるということ。』
アフロヘアがトレードマークの元・朝日新聞編集委員が、50歳、夫なし・子なしで無職の人生をスタート。その先に見いだした希望とは。
異なる価値観を知ることでお金の不安を軽減できる
『「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済』
「その日暮らし=Living for Today」を送るタンザニアの人々の生活を通じ、日本人の生き方や価値観、社会の仕組みについて問い直す。
無職を追体験しながら、お金から解放され「働くこと」を見つめ直す
『あたらしい無職』
41歳で東京でひとり暮らしする女性が、「好きな仕事で生きる」と決め、非正規雇用、正社員、アルバイト、無職を渡り歩いた記録。
何かにハマった人の痛快な浪費に"幸せなお金の使い方"を学ぶ
『浪費図鑑─悪友たちのないしょ話─』
アイドル、俳優、舞台、コスメ…などに熱い愛を注ぐオタク女性が、どのようにお金を使っているのかを赤裸々につづったエッセイ集。
元シンクロ選手"跡取り娘"が切り開く書店の未来
シンクロ元日本代表から書店の"跡取り娘"へ。異色の経歴を持つ二村知子さんが営むのは、大阪・谷町の隆祥館書店。厳選された良書が並ぶ書店として、知る人ぞ知る存在だ。
二村さんがトークイベント「作家と読者の集い」を始めたのは7年前。「"なぜ50代の作者が戦争を知っているみたいに書けるんやろ? 会って聞いてみたい"。『反戦フェア』の本を読んだお客様の言葉に、これだ! と思い立ちました」。その本の著者を招いて以降、これまで約200回ものイベントを開催。「読者と本をつなぎ、読者と作家をつなぐ。これこそリアル書店の役割だと思います」。
隆祥館書店
住所/大阪市中央区安堂寺町1-3-4
安堂寺Rタワー1階
電話/06-6768-1023
営業時間/8時30分~22時(月~土曜)、10時30分~20時(日曜、祝日)
定休日/正月三が日
【仕事の不安がなくなる5冊】足りない経験は本で積む!
今年4月、東京・池袋にビジネス書専門の書店、天狼院書店「Esola池袋店」STYLE for Bizがオープン! 棚の選書をするだけでなく、イベントなども企画する女性店長の木村保絵さんに、仕事の悩みに効く本を厳選してもらいました。
『暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由』
◎雇用の不安、病気で休職、etc.すでに困難に直面中です…→人生は何度やり直してもいい! そんな気持ちになれる
『ザ・ファースト・ペンギンス 新しい価値を生む方法論』
◎今よりもっとやりがいのある仕事がしたい!→置かれた場所で新しい価値を生み出す人になる
『成果につながる! 仕事と時間の「仕組み術」』
◎仕事と家庭とをうまく両立させる自信がない…→時間の使い方で"追われてる感"から解放される
『変化できる人 人は誰でも、何歳でも変わることができる』
◎自分の仕事は、いつかAIに取って代わられてしまうかも…→時代に合わせて"必要とされる人"になる方法
『ストレッチ 少ないリソースで思わぬ成果を出す方法』
◎管理職に抜擢(ばってき)! でも、チームをまとめられるか不安…→"今あるパワー"を生かす方法を学ぶ
悩んだら本に答えを求めて書店の棚の前に立ちます
木村保絵さんは大学卒業後、NPO活動や地方創生事業に従事したが、「30歳過ぎてもきちんとした社会人経験を積めていない感覚がありました」と振り返る。「足りないスキルを"経験"できるビジネス書を読み、自信や希望を失わないように、自らを奮い立たせていました」。
「『自分がサービスを作り出せる人間になれば、好きなことが天職になる』という考えに刺激を受け、天狼院書店の文章講座を受講。それが、本に関わる仕事に出合うきっかけに」
今でも、迷ったら書店の本棚の前に。「表紙を眺めていると、訴えかけてくる本が見つかる。その本は、必ず悩みに答えてくれるんです」。
天狼院書店「Esola池袋店」STYLE for Biz
住所/東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2階
電話/03-6914-0167
営業時間/10時30分~21時30分
定休日/Esola池袋に準じる
(ライター 工藤花衣=東京・土井裕美=大阪、写真 小野さやか=東京・太田未来子=大阪)
[日経ウーマン 2018年9月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。