リーダーが語る 仕事の装い

ベンチャー三銃士が慕う陶芸家 皆おそろいから脱せよ 陶芸家 辻厚成氏(下)

2018/11/4

東京都内に自らの窯を持ち「東京陶芸家」を名乗る辻厚成氏。5歳から作陶を始め、70年にわたり独創的な陶芸活動を続ける。少年のころから幅広い交友を持ち、さまざまな著名人に影響を受け、影響を与え続けてきた。

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――セレクトショップの草分け、サンモトヤマの創業者、故茂登山長市郎さんに薫陶を受けた話を聞きました。ほかに影響を受けた大人はいますか。

「やはり小学生のとき、御茶ノ水にある山の上ホテルのオーナー、吉田俊男さんに非常にかわいがっていただきました。吉田さんはおしゃれと食べることが大好きな方でね。銀座を連れ回してくれながら、『これが旨(うま)いんだ』『この生地がいいんだ』と教えてくれました」

「食べることでは、前日に電話がかかってきて、『あすの朝、僕んとこ来なさい』と。指定された時間に自宅へうかがうと『じゃあ行こう』といって、お迎えの車で九段からホテルへ一緒に連れていかれました。それで、その日のメニューを試食させられるんです。『どうだ』と尋ねられ、『ちょっとスープが塩辛いかな』と答えると、『そうか』と料理長を呼んで『辻くんがちょっと塩がきついと言ってる』って。子供ながらに『これまずいな』と思いました(笑)」

「そんなふうにして、大人たちに教え込まれました。自然と刷り込みですよね。陶芸家で美食家の北大路魯山人さんには、銀座のすし店、久兵衛に連れていってもらいました」

■VANの石津謙介さんに思うこと

――当時を振り返り、装いについて何か思うところはありますか。

「僭越(せんえつ)ながらひとつ『残念だな』と思うことがあります。ご存じのとおり、ヴァンヂャケット(VAN)が全国を席巻しましたでしょ。アメリカ文化を我々に紹介してくれたのですが、『使っていた素材がもう少し良かったら』と思うんです。そうしていたら、日本の若者の目はもっと磨かれたと思うのです」

VAN創業者の石津謙介さんの言葉「最先端を知りたければ羽田へ行け」を実践したという

「VAN創業者の石津謙介さんといえば、『時間ができたら羽田空港へ行け』と何かに書いておられて、これにはカルチャーショックを受けました。当時、洋書は船便なんで、発売から3、4カ月遅れで届くわけです。写真の撮影を考えると、半年遅れになります。ですから『最先端のファッション、文化を知りたかったら羽田へ行け』となるわけです。その言葉を実践して、ときどき羽田に行きました」

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