東京都内に自らの窯を持つ数少ない陶芸家として「東京陶芸家」を名乗る辻厚成氏。「厚成紅(こうせいあか)」と呼ぶ紅色を使った前衛的な作品で知られる。5歳から作陶を始め、9歳で美術展に出品、その独創的な陶芸活動は70年にわたる。独自のライフスタイルにこだわり、ファッションについても一家言を持つ辻氏に、装いについて聞いた。
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――装いについて、どのようなこだわりをお持ちですか。
「まず、ひとつのブランドでそろえるのは嫌いです。それから『あれはあのブランドだ』と分かってしまうのも嫌ですね。街を家内とぶらぶらして、何か目に留まったものをアーティストやメーカーに関係なく、集めて着るのが好きですね」
「時代の空気を私なりに読みながら、ある程度流行を取り入れて自分を表現したいと思いますね。あんまり流行へいっちゃうとはいかがなもんかな。やはりまず己があって、次が流行となるのではないでしょうか」
「今年で76歳になるものですから、家内共々なるべく明るい色を着たいと思っています。だたでもジジイってのはね、しょぼくれてきますから(笑)。作品とか自己表現では赤をすごく使いますが、ファッションでは白が一番多いですね」
■ファッションは靴が一番大事
――こだわっているファッションアイテムはありますか。
「帽子、ステッキですね。あとは靴。ファッションでは靴が一番大事だと思います。ここぞというときに、キチッと手入れの行き届いたいい靴を履くと、気持ちが引き締まります。欧米のホテルでは、いちげんの客が来ると靴を見るといいます。レストランなどでも扱いが違いますよね。『足元を見る』という言葉があるくらいですから」
「メーカーの名前を挙げさせてもらうとジョンロブの革靴を愛用しています。もう三十何年使っているものもあります。時代に左右されないデザイン、革もつくりもいい。それから購入後のフォローがいいですね」
――辻さんは前衛と伝統をともに大切にされていますが、その源はどういうところにあるのでしょうか。
「母親が陶芸家(辻輝子氏)でしたので、5歳のころから粘土で遊ぶようになりました。ただ楽しいから作ってる、粘土と遊んでいるわけです」