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巨匠ヒューイット 世界5都市でバッハ全曲ピアノ演奏

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カナダ出身の世界的ピアニスト、アンジェラ・ヒューイット氏が、バロック期ドイツ最大の作曲家J・S・バッハのすべての鍵盤曲を弾く連続演奏会を進めている。2016~20年に東京を含む世界5都市で各12回ずつ公演し、全作品をそれぞれ完全演奏する。バッハ演奏で現代最高の評価を受ける巨匠の集大成だ。同公演のため来日した彼女にバッハの音楽の魅力と全曲演奏の意義を聞いた。

バッハの鍵盤音楽のすべてを弾くヒューイット氏の連続演奏会は「バッハ・オデッセイ(バッハ遍歴の旅)」。米国のニューヨーク、英国のロンドン、カナダのオタワ、イタリアのフィレンツェ、それに東京の計5都市でそれぞれ12回公演し、いずれの都市でもバッハの鍵盤曲をすべて弾き尽くすという壮大な企画だ。16年から始まり、20年までに5つの都市を舞台にして5回分の全曲演奏を達成する予定だ。

バッハ演奏で世界最高評価を受けるピアニスト

――「バッハ・オデッセイ」の意義は何か。

「(ロンドンにある名門の)ウィグモアホールのディレクターが企画を提案してきた。私はこれまでもバッハの鍵盤音楽の全曲を演奏している。そこで一応の集大成として、全曲公演シリーズを各都市で開いてもいいのではないかと考えた。私ほどバッハの鍵盤音楽の全曲を弾いてきたピアニストは現役と故人を合わせてあまりいない。全曲をまとめて弾くのは素晴らしい経験だ。聴き手にとっても(各都市での)12回の公演で偉大な音楽を鑑賞するのは意義のあることだと思う」

カナダ出身のピアニストでバッハ演奏の大家といえば、グレン・グールド氏(1932~82年)の名が長く筆頭に挙がってきた。この20世紀の巨匠をしのぐほどの名声を獲得し始めたのがヒューイット氏だ。英ハイペリオン・レコードからすでにバッハの全鍵盤曲のCDを出し、15枚組のボックスセット(「フーガの技法」を除く)にもなっている。従来のバッハ像を破壊するほど個性的な演奏を繰り広げたグールド氏。これに対し、ヒューイット氏は即興的なひらめきや華やかな歌謡性を盛り込みながらも、全体として各声部の線の織り成す美しい流れと、確固とした構成感のある正統派の演奏が特徴だ。

カナダの首都オタワの音楽一家に生まれた彼女は3歳からピアノを始め、1985年のトロント国際バッハ・ピアノコンクールで優勝した。2006年に英グラモフォン・アワード「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」、14年に2枚組CD「バッハ:フーガの技法」で日本のレコードアカデミー賞も受賞するなど、世界中で数多くの最高評価を得ている。06年に女王誕生記念大英帝国勲章を受章したバッハ弾きは、今や他の追随を許さない。

 バッハの鍵盤曲は「ゴルトベルク変奏曲」「平均律クラヴィーア曲集」「イギリス組曲」など膨大にある。しかもこうした曲集を最小単位で1曲ずつ数えると、様々な変奏曲、前奏曲とフーガ、またはアルマンドやメヌエットといったダンス音楽など、全体で数十曲組み合わせて構成しているため演奏時間も長い。

全曲CD録音2回目は伊ファツィオリのピアノ

「ゴルトベルク変奏曲」をはじめヒューイット氏の公演は、一人で延々と80分以上弾き続けて一つの世界を築き上げるといった印象だ。その中には誰もが知る有名な一曲というのもある。だがあくまで曲集全体の長く広がる時間の中で、深遠なバッハの世界に聴き手を引き込んでしまうのが彼女のマジックだ。

――バッハの鍵盤作品の魅力は何か。

「バッハの作品には300年前に作られた古臭い音楽という感じが全くない。とても新鮮で生き生きとしていて、現代的でさえある。それはやはりメヌエットやブーレといったダンスのリズムをもとにした音楽だからだと思う。『トッカータ』『パルティータ』などいずれの曲集でも、それを構成する各曲がダンスのリズムをもとにしている。それが聴く人にとても喜びを与える」

「バッハの作品はいろんな異なったレベルで楽しむことができる。音楽の専門家でも、音楽教育を受けたことのない人でも、各人のレベルに応じて楽しめる。それはやはりダンスのリズムを持つ音楽だからだろう」

ヒューイット氏のバッハ全曲CD録音は今や2回目に入っている。1回目の全曲録音で彼女が使用していたのは米スタインウェイ・アンド・サンズのピアノだった。だが2回目の「平均律クラヴィーア曲集全曲(4枚組)」と1回目最後の「フーガの技法」から彼女が選んだのは、1981年創業の伊ファツィオリのピアノだ。イタリアらしい乾いた明快な響きで「歌うピアノ」といわれる。そのファツィオリを弾いてすでにバッハ作品では2回目の「ゴルトベルク変奏曲」もCD録音した。

バッハの生きた時代にはまだ現代の仕様のピアノはなかった。鍵盤音楽とはいっても、チェンバロやフォルテピアノなど当時の仕様の楽器で弾く古楽奏者の演奏も台頭して久しい。そうした中で現代仕様のピアノにこだわり、とりわけ新興メーカーのファツィオリを好んで使う著名ピアニストとしても、ヒューイット氏は異彩を放っている。

――現代仕様のピアノ、特にファツィオリにこだわる理由は何か。

「ピアノはすでにバッハの生きた時代に発明され始めていた。当時は人間の声を出せるような鍵盤楽器が追求された。バッハには特に4つの声部を持つ曲が多い。ファツィオリのような現代仕様のピアノだと、そうした4声を異なる音色で弾き分けることができる。(3本ペダルの他のピアノと異なり)ファツィオリは4本ペダルを持っていることもあり、オーケストラのような色彩、歌手のような色彩、オーボエやオルガンの音色など、異なる音を豊かに出せる」

 ヤマハ、河合楽器製作所、スタインウェイなど大手メーカーがしのぎを削る日本のピアノ市場に、ファツィオリは後発ながら高級モデルとして食い込もうとしている。今年はファツィオリジャパン(東京・港)創立10周年記念として「FAZIOLIオンライン・ピアノコンクール」を開催し、10月6~7日の決勝で中川真耶加氏が優勝した。日本市場への攻勢を支える最大の存在が、ファツィオリを愛用しているヒューイット氏だ。

誰の心にも語りかけてくる深い精神性の音楽

――ファツィオリで弾く利点と難しさは何か。

「20年前に初めてファツィオリを弾いたとき、この楽器は自分に演奏の自由を与えてくれるとすぐ気が付いた。弾きやすい機能を持つだけでなく、柔らかい音から力強い音までの音色の幅が非常に大きいと感じた。このピアノならば自分の想像通りに弾ける。ピアニストが創造力を働かせることができれば、このピアノはうまく弾けると確信している」

「逆にファツィオリを弾くことは挑戦でもある。色彩が豊かすぎるので、ピアニストは何を弾きたいか、事前にはっきりとした構想を持つ必要がある。私自身はファツィオリを弾き続けて退屈することはない」

――現代にバッハを聴く効用はどこにあるか。

「精神性のレベルでバッハほど深い音楽はない。魂に響いてくる音楽だ。バッハ作品のコンサートを聴いた人からよく聞くのは、コンサートの前後では自分がまるで違った人間のように感じるということだ。バッハ作品を聴き終わって会場から出てくると、日常の様々な問題を忘れ、慰めや心の安らぎを感じるという。マジックというべき魅力があると思う」

――なぜそんな効用が生まれるのか。

「バッハの音楽は抽象的だ。ほかの作曲家の曲のように明確なストーリーを語っているわけではない。しかしそこには彼のあつい信仰と、その信仰への喜びが表現されている。だから年齢や国籍、教育レベル、バックグラウンドにかかわらず、誰の心にも語りかけてくる。ジャズのミュージシャンたちもバッハ作品を好んで弾いている。あらゆるジャンルの様々な楽器で演奏されることを考えると、誰にも訴えることができる音楽なのだと思う」

世界5都市で順次鳴るグローバル時代のバッハ

インタビューは9月28日、紀尾井ホール(東京・千代田)での「バッハ・オデッセイ」の東京編第4弾「平均律クラヴィーア曲集第2巻」公演の直前、ファツィオリジャパンで行われた。彼女は現在、ロンドン、オタワ、伊ウンブリア州に居を構え、世界各地で演奏活動をしている。次回の東京での「バッハ・オデッセイ」は、同じ紀尾井ホールで19年3月13日に開かれる「トッカータ全曲」だ。

明瞭かつ正統に響き、華やかさや親しみやすさも伴って誰をもひき付ける彼女の演奏は、グローバル時代のバッハにふさわしい。バッハの同じ旋律が、5つの都市で順次鳴り、フーガのように世界を巡る。21世紀バッハ演奏の巨匠と同時代人である喜びをかみしめたい。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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