五輪で認められたパラ教材 日本の学校もっと使ってマセソン美季さんのパラフレーズ

マセソン美季さん
マセソン美季さん

先日、「国際オリンピック委員会(IOC)会長からの手紙」という件名のメールが届いた。何かの間違いだと思い、しばらく放置していた。すると数時間後に今度は、国際パラリンピック委員会(IPC)から「IOCの委員就任おめでとう」というタイトルのメールが届く。

訳が分からずメッセージに目を通すと、どうやら私は、IPCの教育委員会に続き、IOCの教育委でも委員の任命を受けていたことが判明した。「アイムポッシブル」というIPC公認教材が世界で注目を浴び、社会変革に寄与していると認知されてきたことが理由らしい。多様性を認め、あらゆる人たちが参画できるインクルーシブな社会を構築することを、パラリンピックを題材にわかりやすく説明する教材だ。開発や普及推進に携わっている者として、成果が認められたことは大変うれしいニュースだった。

ジェンダー平等や多様性の向上を推進した結果、今回発表された委員会のメンバーは、女性が過去最高の4割以上を占めた。これまで「ダブルマイノリティー」だったはずの女性であり障害者である私たちに2倍の価値が見いだされる時代が到来したのだろうか。

同じころ、アフリカはマラウイ共和国のパラリンピック委員会で仕事をするジェームスから喜ばしい報告を受けた。アイムポッシブルを使った授業が成果をあげているという内容だ。マラウイは8割が農業関連に従事する伝統的な農業国。国内総生産(GDP)は世界でも下から数えた方が早く、障害者に対する差別や偏見が根付いている。

15校を対象にしたモデル授業では、障害当事者らに夢や希望を与えることができた。また障害のある人たちを包摂する社会の重要性を、学校のみならずコミュニティーに紹介するきっかけにもなり、この教材を使った授業はさらに多くの地域に広がっていきそうだという。

「アイムポッシブル」は言葉や文化、経済状況などが全く違う地域でも機能する。世界で一番初めにこの教材を導入した日本でもより多くの学校に活用され、その価値を深める教育が推進されることを期待している。

マセソン美季
1973年生まれ。大学1年時に交通事故で車いす生活に。98年長野パラリンピックのアイススレッジ・スピードレースで金メダル3個、銀メダル1個を獲得。カナダのアイススレッジホッケー選手と結婚し、カナダ在住。2016年から日本財団パラリンピックサポートセンター勤務。

[日本経済新聞朝刊2018年10月11日付]