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データが導くサービスエース 大坂選手も試合中に活用 観客に見せれば試合展開分かりやすく

2018/10/11 日本経済新聞 朝刊

データを積極的に使う選手がいる一方、「事実を突きつけるので怖がる選手も多い」とSAPのジェニー・ルイスさん。WTAツアーの常連選手500~600人のうち日常的に使うのは90人ほど。「故障の予防とか、プレー以外の使用法も教えている」とルイスさん。打ったサーブの本数、ラリーに費やした時間などから、体への負荷が分かり、「今は休みをとる時期」といった判断ができる。

東京五輪に向け、日本テニス協会もオーストラリア協会の解析システムを導入、四大大会などには分析チームを派遣する。このように情報戦は資金力のある団体が有利になりがちだが、「WTAのシステムは全選手に公平で、オープンなこともポイント」とルイスさん。来年からは徐々に一般にも公開する予定だ。

■セーリングのレース展開も一目で

五輪競技には一般の人にルールや試合形式がなじみのないものも少なくない。デジタル技術を活用すれば、そうした「垣根」を低くし、競技の魅力や観戦の楽しさを高めることにもつながる。

9月16日まで東京五輪の本番テストを兼ねて開催されたセーリングのワールドカップ江の島大会では、レース状況をリアルタイムで伝えるトラッキングデータが提供された。開発・制作したのはこちらもSAPだ。

国際統括団体ワールドセーリングと2017年から4年契約を結び、年間1万レースのデータを取得しているという。主要大会はブラウザー上でライブだけでなく、アーカイブで見ることもできる。シドニー五輪に男子470級で出場した浜崎栄一郎さんは「ここ数年の進化はすごい。一般の人にも理解しやすいスポーツになる」と驚く。

沖合で行われるセーリング競技は陸地から観戦が難しいうえ、セーリングならではの特徴が立ちはだかる。例えば、幾つかのブイを回るコースは必ず風上に向かってスタートするように設定されるが、艇は構造上、風に対して45度の角度までしか進めない。このため艇は左右に切り返しながらジグザグに進んでいくので、右へ向かう艇があれば左に進路を取る艇もある。どの艇が先頭なのかわかりにくく、途中経過を楽しめない。

そんな一見分かりにくいレースを「見える化」してくれるのが、毎秒単位で順位をはじめとする情報が更新されるSAPのシステムだ。全ての出場艇が積んだGPS(全地球測位システム)から位置情報がクラウドサーバーに送られるほか、海上に設置されたセンサーで風向や風速を測定。集めたビッグデータをビジュアル加工し、レースを見せることができる。

セーリングは自然との闘いでもある。風向や潮の流れ、波の高さなど刻一刻と変わる環境がレースに与える影響を示すこともできる。「どの艇が最も風をうまくつかまえているかや、最適なコースと各艇のたどっているコースがどれくらいずれているかも一目でわかる」(SAPジャパンのスポーツ・イノベーション推進担当の佐宗龍氏)。もちろん、選手がレースの反省や次戦の戦略立案に使うことも可能だ。ライバル艇の戦略分析にも使える。

ワールドセーリングのチーフ・コマーシャルオフィサー、ヒュー・チェンバース氏は「デジタル技術によって、この競技をよりエキサイティングでアクセシブル(身近なもの)にできる」と強調する。

■IOCはアリババと組みデータ収集

国際オリンピック委員会(IOC)は17年、中国のアリババ集団と最高位スポンサー(TOP)契約を結んだ。東京五輪からビッグデータの収集に乗り出す。

各会場に訪れた人の数やシャトルバスの台数、必要な機材と運搬に必要なトラック数。こうした記録をIOCは残していなかった。過去の経験が生きず、それがコスト増を生んでいるとの認識があった。「大会ごとのデータをクラウドで共有、そこに開催地の人口、町の成熟度などを加味して解析すれば、かなり正確に開催コストを把握できる」と、ジョーイ・タン同社グローバル戦略室長は話す。

東京五輪でIOCはまず、日程と結果、交通手段、選手紹介などを搭載したアプリをデビューさせる。これまで各五輪の組織委員会が作ってきたが、IOCが一括して作れば開催国の出費を減らせる上、観客・視聴者の情報も集まる。「22年北京冬季五輪までには、各個人の好みに応じた情報を発信し、公式グッズの開発にも役立てられると思う」とタン室長。

国際映像を制作するオリンピック放送機構(OBS)もアリババ集団と契約した。高画質化と共にデータ量が増えていたが、クラウド導入で各放送局の負担は減る。放送網が未発達で五輪中継が見られない地域もあるという問題も解消されていくそうだ。

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