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「何を言うか」より大事なこと 笑点のすごさ

立川吉笑

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NIKKEI STYLE

皆さんはテレビ番組「笑点」についてどういうイメージをお持ちだろうか。

「面白い」「国民的長寿番組」「高視聴率」「古臭い」「実は立川談志が立ち上げた」「毎週楽しみ」「よく知らない」。色々なイメージがあるに違いないが、世間と落語家との接点として絶大な力を持つ笑点は、落語界の宝の一つといえる。

しかしながら、「笑点って面白い」と思う人が大勢いる一方で、「笑点は古臭いもの」と思っている方が大勢いるのもまた事実だろう。「ベタで古い笑いをやってる番組」というような印象。実は他ならぬ僕自身が、落語家になる前(というか落語家になってしばらくたってからも)そういう印象を持っていた。

1984年生まれの僕は、お笑いコンビ「ダウンタウン」のネタに直撃された世代。それをきっかけにお笑いに興味をもち、漫才・コントとたくさん見ていくうちに、ラーメンズ、バカリズム、バナナマン、笑い飯、東京03、おぎやはぎなど好きな芸人さんが増えていき、ついには自分もやりたいと思うようになった。

そういったお笑いの流れに軽く帰属した(気になっている)人間にとって、笑点の笑いは自分が知っている笑いとはかけ離れており、古臭さがそのまま面白くなく感じることに直結した。ダウンタウンの松本人志さんがチェアマンを務めるバラエティー番組「IPPONグランプリ」のような、発想の飛躍力を競うフリップ大喜利に比べ、笑点スタイルの大喜利はレベルが低いと思い込んでしまっていたのだ。

来なくなったオファー

そんな僕が、いくつかの出来事をきっかけに、今では、やっていることや目指していることが違うだけで、どっちが上か下かじゃないと思うようになった。

落語家になって3年目の頃、若手落語家が4人でフリップ大喜利をやる深夜番組にキャスティングされた。司会が今田耕司さんだったこともあり、僕は息巻いて毎週の収録に臨んでいた。例えばこんなふうに。

Q「『激おこぷんぷん丸』より怒ってください」

A「業務用 激おこぷんぷん丸」

Q「レディ・ガガがまもなく来日。ハードルが上がりまくっている奇抜なファッション、今年はどんな格好で来た?」

A「裸にコシノジュンコをおんぶ」

Q「TPP、何の略?」

A「TTTPPPPP」

つまり、学生時代から影響を受けてきた松本人志型の大喜利をやった。いわゆる落語家らしからぬ解答で、何度も今田さんに笑ってもらうことができた。だが、僕の横では桂宮治兄さんが笑点型の大喜利でそれ以上にドカンと受けていたのだ。

僕の価値観では自分の解答の方が面白く感じるけど、収録現場では宮治兄さんの解答にねじ伏せられることが多々あって、それを思い出してはなかなか眠りにつけない夜が何度もあった。

それから数年たって、今度は「笑点特大号」というBSで放送している番組内の「若手大喜利」コーナーに呼んでもらった。これは笑点メンバーの師匠が司会をされ、若手落語家6人くらいで地上波の笑点大喜利と同じようなことをやるコーナー。

普段の自分とは違うスタイルが求められているのは明らかだったし、僕自身も自分なりに笑点型の大喜利をやろうと意気込んで収録に挑んだ。が、これがとても難しかった。笑点スタイルの大喜利をレベルが低いと決めつけるからには、そんなものは余裕でこなせて当然なのに、全然自分にはできない。それでも何度か収録に呼んでいただいたけど、あるところからぱったりとオファーが来なくなった。完全に自分の力不足が原因だ。

型通りできても面白くできない

笑点型の大喜利がなぜ難しいのか。色々考えているとき、弟弟子の笑二が興味深いことを言った。

「古典落語をやるとき、先代小さん師匠の型通りにくすぐり(ボケ)を入れても今の自分では全然笑いを取れない。だから笑ってもらえるように補助線としていくつかやりとりを足すようにしている。小さん師匠が3回しゃべれば笑わせられるクダリでも、自分は5回しゃべらないと笑ってもらえない」

これは僕も痛感していて、名人上手の音源を聴いてすごいなぁ、面白いなぁと思って、その通り自分がやってみても同じように面白くはならない。これは当然のことで、先代小さん師匠と僕とでは人としての魅力や説得力が全然違うのだ。

このことに気づいた時に、笑点型の大喜利のすごさが身にしみた。松本人志型の大喜利が発想の飛躍力を競うのに対して、笑点型の大喜利は人間力を競うものなのだ。

「何を言うか」じゃなくて「どう言うか」、さらには「誰が言うか」。松本人志型の大喜利は、文字にして読んでも面白いものがほとんどだ。発想の飛躍を楽しむ形式だから、字で追うだけでもその飛躍ぶりを堪能できる。一方で笑点型の大喜利は、問題と解答を文字で見たとき、上手いなぁと思うことはあれど、そこまで面白いとは感じないことが多い。でも、実際にあの百戦錬磨の師匠方が言うと、なぜか面白い。そこには人間力が関係している。

木久扇師匠や小遊三師匠と同じ解答を自分が言っても全然ウケないだろう。なぜなら人間力に圧倒的な差があるから。これまでのキャリアによる圧倒的な説得力の差があるから。

先代小さん師匠のひと言

そういう目線で笑点を見たら、あそこに並ばれている師匠方のすごさがよくわかる。神話に出てくる神々のごとき存在感。何気ない一言を強烈なボケに変えてしまう人間力。仮にあの舞台に自分が座ったとして、何を言えばいいのか。想像すらできない。

「笑い」として、ベタなものはレベルが低いと見下しがちだけど、それは大きな勘違いだ。そのことに気づいたとき、自分のお笑い観がガラリと変わった。「何を言うか」はもちろん大事だし、これからもこだわっていきたいけど、それ以上に「どう言うか」「誰が言うか」が大事なのだ。

思えば、先代小さん師匠はそのことを端的に言い残している。

「芸は人なり」

立川吉笑

 本名、人羅真樹(ひとら・まさき)。1984年6月27日生まれ、京都市出身。180cm76kg。京都教育大学教育学部数学科教育専攻中退。2010年11月、立川談笑に入門。12年04月、二ツ目に昇進。古典落語のほか、軽妙かつ時にはシュールな創作落語を多数手掛ける。立川談笑一門会やユーロライブ(東京・渋谷)での落語会のほか、水道橋博士のメルマ旬報で「立川吉笑の『現在落語論』」を連載する一方、多くのテレビ出演をこなすなど多彩な才能を発揮する。著書に「現在落語論」(毎日新聞出版)

これまでの記事は、立川談笑、らくご「虎の穴」からご覧下さい。

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