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マネー研究所
マネートレンド

2018/10/19

マネートレンド

老齢厚生年金は現在、支給開始年齢を段階的に引き上げており、65歳より早くもらえる人もいる。繰り下げの対象は65歳に受給権が発生する年金なので、この「特別支給の老齢厚生年金」は繰り下げできない。そして65歳からの年金は繰り下げの申し出ができるのは1年後の66歳からだ。

厚生年金の受給者は老齢厚生年金と老齢基礎年金を同じ時期だけでなく、別々の時期に繰り下げることもできる。ただ、別々にもらい始めるならその都度手続きをする必要がある。また老齢厚生年金を繰り下げる場合、厚生年金基金があるなら、基金にも繰り下げの届け出をする必要がある。

見落としがちな注意点をチェックしていこう──。

注意点1 長生きすればメリット 得になるのは、もらい始めて12年後

繰り下げは長く生きるほど効果がある。増額率は大きいが、増えた年金を受け取り始めてもすぐに本人が亡くなるような事態になったら、65歳からもらった方がよかったということになりかねない。

検討の際によく取り上げられるのが「損益分岐点」だ。繰り下げた場合の受取総額が、65歳からもらった場合の受取総額を上回る時点のことで、もらい始めてからおおむね12年とされる。70歳まで繰り下げたら82歳まで生きればおトクというわけだ。

ただし、自分がそれより長く生きるかどうかは分からない。平均寿命を参考にすれば、男性は81歳で女性は87歳。ちなみに65歳時点の平均余命は男性が約19年で女性は約24年(いずれも2017年)。それぞれ84歳と89歳まで生きる計算だ。こうしたデータをみると、女性は70歳まで繰り下げても損をしない人が多そうだ。

そこで社会保険労務士やファイナンシャルプランナーらが薦めるのが、妻の年金の繰り下げだ。年金をはじめとする老後のお金は、配偶者がいるなら夫婦ワンセットで考えたい。社労士の森本幸人さんは「夫婦では夫が先に死ぬケースが多いので、あとに残る妻の年金を繰り下げて増やしておきたい。先延ばしの期間は夫婦で働いて収入を得るなどして対応したい」と話す。繰り下げるなら老齢基礎年金が有効だ。

注意点2 加給年金など加算部分は対象外 失う金額と増額分見比べて

繰り下げて増えるのは年金の本体だけだ。夫婦では、老齢厚生年金の家族手当にあたる「加給年金」という加算額が夫に付く場合が多い。ただこの加算部分は増額の対象外だ。

加給年金は厚生年金に20年以上加入した夫が65歳になったときに年下の妻がいれば、妻が65歳になるまで夫の厚生年金に上乗せされる。年額で約39万円と決して小さくない。しかし、老齢厚生年金を繰り下げるとその間はもらえない。仮に5歳以上年下の妻がいる夫が70歳まで繰り下げると、5年分の計200万円近くを失うことになる。

「加給年金が付く場合、配偶者の年齢に応じた加算の合計額と繰り下げによる増額分を見比べる必要がある」と前述の社労士の沢木さんは話す。自身は「妻との年齢差は1歳だったので、繰り下げで失う加給年金よりも増額のメリットの方が大きいと判断した」という。加給年金は厚生年金に連動するので、失うのが惜しければ老齢基礎年金だけを繰り下げ、老齢厚生年金を繰り下げなければ受け取ることができる。

夫の加給年金は妻が65歳になると妻の年金の「振替加算」に切り替わる。こちらは妻が年上でも条件を満たせば夫が65歳になったときから妻自身の年金に付く。この振替加算も増額の対象外だ。年金を繰り下げている間は受け取ることができない。金額は妻の生年月日で異なり、年額で約1万5000~22万円台(1966年4月2日生まれ以降はゼロ)と幅があり、受け取り始めれば一生続く。年齢が高い人ほど金額は大きいので、繰り下げを利用するなら、やはり増額分と見比べて検討する必要があるだろう。

注意点3 税金や社会保険料も増える 「手取り」では目減りも

70歳まで繰り下げると年金額は42%増えるが、実はこれは「額面」の数字だ。年金額が増えれば、税金のほか、健康保険や介護保険といった社会保険料などが増える場合が多く、その分「手取り」は目減りする。

男性の平均賃金で40年間会社員をしていた人が65歳で受け取る年金額は約188万円(厚生年金と基礎年金の合計)。70歳まで繰り下げれば42%増の266万円となる。この金額を基にみずほ総合研究所の上席主任研究員、堀江奈保子さんが東京都世田谷区を例に手取り額を計算すると、単身世帯は65歳で169万円、70歳で229万円となり、増額率は35%だった。妻がいる夫婦世帯だと、夫の年金の手取り額は65歳が177万円、70歳で234万円となり、増額率は32%。ともに42%には届かなかった。前述の損益分岐点でみると、総額が上回るのは単身世帯は84歳、夫婦世帯の場合は85歳となり、額面より2~3年遅くなる。

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