がんの新免疫療法のヒント? カピバラ大型化の秘密

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/10/13
ナショナルジオグラフィック日本版

カピバラの母子。ブラジルのパンタナールで撮影(PHOTOGRAPH BY FRANS LANTING)

南米の川岸に生息するカピバラ。性格が穏やかな草食動物として知られる。ただ、体重は人間1人分になることもあり、現生のげっ歯類で一番大きい。近縁の動物と比べても体重は60倍もあり、なぜげっ歯類の中でカピバラだけが大きくなれたのか、長い間謎だった。最新研究で、その答えの一つが明らかになった。

2018年9月23日付けで論文投稿サイト「bioRxiv」に発表された最新の研究によれば、コロンビア、スウェーデン、米国の研究者チームがカピバラのDNA配列を解読した。これによって、カピバラの大型化をもたらした仕組みを示すヒントが得られたほか、抗がんメカニズムに関係するとみられる遺伝子シグネチャーが発見された。これは新しい治療法の開発につながる可能性を秘めている。

論文筆頭著者のサンティアゴ・ヘレーラ=アルバレス氏は、コロンビアのロスアンデス大学で修士課程の大学院生だった頃、カピバラを研究し始めた。2014年から2015年にかけての干ばつでコロンビアの多くの川は干上がり、地方の土地は乾ききっていた。ところが、食物とする植生が減ったにもかかわらず、カピバラは干ばつの直接的な影響を受けなかった。そこで、ヘレーラ=アルバレス氏は、このやたらに可愛い動物が、そもそもどのように進化してきたのかに興味を持った。

「カピバラは、南米のカリスマ的な動物なんです」とヘレーラ=アルバレス氏は言う。

こうして「巨大化」した

カピバラの祖先はアフリカ大陸で約8000万年前に登場し、そのおよそ4000万年後に南米大陸に到達した。親戚筋にあたる動物たちは皆、ごく普通のサイズのげっ歯類だ。たとえば、ブラジル東部の低木地帯に生息する近縁のげっ歯類モコの体重は、1キロにも満たない。

米デューク大学の進化生物学者V・ルイーズ・ロス氏によれば、げっ歯類の多くが小さいのは、身を隠しやすく、体の大きな捕食者に捕まりにくいからだ。しかし、カピバラの祖先が南米にやってきた頃、そこには全くと言っていいほど捕食者がいなかった。おかげで祖先たちは、大型化し始めることができた可能性がある。

「捕食者がいなければ、げっ歯類の動物たちを小さいままに留めておく進化的圧力は小さくなります」とロス氏は説明する。

今回の研究によると、カピバラが桁違いに大きくなることができた秘密が、DNAの中に隠されていたという。カピバラを含むテンジクネズミ小目の動物は皆、独自の型のインスリンを持っているのだ。

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