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堅い「会計」に血が通う 歴史エピソードで解説 「会計の世界史」 田中靖浩氏

2018/10/10

その後、ダ・ビンチは「近代会計学の父」と呼ばれるイタリアの数学者、ルカ・パチョーリの知遇を得る。名画「最後の晩餐(ばんさん)」の構図には、パチョーリの数学的思考が生かされているのではないかと、田中氏は思いを巡らす。「歴史や人物のエピソードを入り口に自由な想像をふくらませると、会計の学びに血が通い、人間行動をマネー的に管理する営みにリアル感が加わる」(田中氏)

■語り口、「講談を意識」

15世紀のイタリアで銀行業で莫大な富を築いたメディチ家。その盛衰は銀行家コジモ・デ・メディチを軸につづられ、簿記システムの活用が発展を支えた様子が描かれる。中世イタリアの活気あふれる商人たちが会社組織の原型ともいえる「コンパーニャ」をつくったとか、何隻もの船と乗組員を失う危険をかえりみず海へ乗り出した船乗りたちを意味した言葉「リズカーレ」が「リスク」の語源になったという説の紹介(どちらも諸説がある)も興味深い。

起伏に富む筋立てを組み上げるにあたって、田中氏は「講談を意識した」という。もともと「笑いが起こる会計講座」を掲げる人気講師だ。会計をテーマとする経営者向けの講演でも、「歴史を織り交ぜた内容は、割と関心を持ってもらいやすい」という経験的な実感があった。落語家や講談師とコラボレートしたイベントを手掛けている点でも型にはまらない「会計の伝道師」といえる。

本の中盤では、産業革命下の英国に舞台が移る。蒸気機関の発明で鉄道が誕生し、世界は大きく変わった。しかし、用地を取得して線路を敷き、街を開発して収益を上げるという、長期にわたる鉄道事業の仕組みは、それまでの会計ルールに収まりきらなかった。そこで持ち込まれたのが、減価償却という発想だ。「イタリアにしろ、英国にしろ、その当時の経済パワーが強い国で、会計の仕組みは熟成されてきた」(田中氏)。会計文化は国力を映すともいえそうだ。

■米SEC、初代トップはあの人の父

となれば、20世紀編の舞台が米国になるのもうなずける。イタリアでは貿易、英国では製造業が会計を育てたが、20世紀米国では証券投資に象徴される金融マネーが会計に深く関わってくる。この章の主人公は、ジョン・F・ケネディ元米大統領の父であるジョセフ・パトリック・ケネディ氏(通称ジョー)。やり手の株式投資家として成功したジョーは、フランクリン・ルーズベルト大統領の当選を資金面で支援。見返りに初代の米証券監視委員会(SEC)の委員長というポストを得た。

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