働き盛りの女性のがん 時短や在宅勤務、企業も支援

2018/10/9

この女性は乳房の再建手術後、炎症による緊急入院も経験。「自力だけでがんばるのは限界がある」と業務でかかわる相手には病気を伝え、「できる・できないなど自分の状況を適切に伝えるよう心がけている」。前出の高橋部長も「不調によって仕事に影響が出てしまうようなら同僚らの支援を得るのも手」と話す。「病気を説明することが必要にはなるが、無理して自分を追い込む前に上手に仲間の支援を引きだそう」と呼びかける。

テルモ、過剰な気遣いなく自然に受け入れ

国立がん研究センターによると、生涯で乳がんになる女性は11人に1人と女性のがんの罹患数トップ。乳がんと子宮がん(罹患数5位)は20代後半から罹患率が上昇。働き盛りの40代後半から高まり、50代も高い。このことから50代前半までは女性のがんの罹患率が男性を上回る。

「『もう働けない』と思わないで」と語る国立がん研究センターの高橋部長

厚生労働省の健康局が10年の「国民生活基礎調査」から特別集計した結果では、仕事をしながら、がんで通院している人は男性が14.4万人に対し、女性は18.1万人。女性の就業率の上昇もあり、さらに増加するとみられる。

テルモのクリニカルサポート部学術チームの課長、小山田香さん(55)は07年に卵巣がんと診断され、2度の転移を経験。今は3カ月に1度、経過観察で受診しつつ働く。

3度目の復帰の日、普段通り自席へ。「お帰りなさい。一同」。机上のメッセージにグっときた。「心の負担を感じずに済んだのは、過剰な気遣いなく皆が普通に受け入れてくれたおかげ」。最初に罹患を伝えた際の上司が傷病手当金の申請はじめ「自分で気づかないことまで淡々と手続きを進めてくれた」のもありがたかったという。

がんは種類や症状も様々。一律ではない「働く」と「休む」の繰り返しを支えるため、テルモは17年に「がん就労支援ルール」を制度化した。患者の就労支援は、3月に策定された第3期がん対策推進基本計画でも重要課題に位置づけられた。高橋部長は「治療しながら働いている人もたくさんいる。本人の気持ちが第一だが、がんと診断されて即、『もう働けない』と思わないで」と強調している。

早期発見へ検診身近に ~取材を終えて~

「女性はぜひ検診を受けて」と辻さん。早期発見は治療のカギ。09年に検診車での乳がん検診を導入したベネッセホールディングスでは、親友を乳がんで亡くした当時の人事担当の女性が制度化に尽力した。働く女性が増えるなか、業務の合間に受けやすい検診の広がりに期待したい。乳がんは自己触診も大切。エイボン・プロダクツ(東京・新宿)が10月に著作権フリーで公開した専門医監修の自己触診の動画「乳液セルフチェック」なども参考になる。

取材した女性たちは口々に仕事を肩代わりしてくれた同僚への配慮や感謝を語った。「待ってるよ」の一言が励みになったとも。時に思わぬ不調に見舞われつつ働くうえで職場の支えは大きい。日ごろから相談しやすい雰囲気があれば罹患も伝えやすく一人で抱え込まずに済む。就労支援には柔軟な働き方など制度に加え、互いを尊重し風通しのよい職場づくりが欠かせない。(女性面編集長 佐々木玲子)

[日本経済新聞朝刊2018年10月8日付]

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