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ボルネオゾウの絶滅危機 「パーム油」が加速

「動物園の恩返し」プロジェクトの原点

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NIKKEI STYLE

すっかり紅葉の季節になりました。北海道では地震に次ぐ想定外の大規模停電。悪夢のような9月でした。産業、流通、観光などすべての分野に大きな被害をもたらしました。特に観光産業への影響はしばらく続くでしょう。不幸中の幸いだったのは、暖房を使わなくていい時期に起きたことです。北海道民はみなこれが冬に起きていたらと身が凍る恐ろしさを感じました。暖房のみならず水道管の凍結・破裂が北海道全域で起きたら……。電気は神経系で水を血液リンパ系に例えるなら北海道は瀕死状態になります。アッ!瀕死状態になるのは人や家畜ですね。電気も水道もなく生きている野生動物たちのたくましさやすごさを改めて認識しました。

前号(「人は熱帯生まれの動物」)からの続きでボルネオです。まずボルネオゾウやボルネオオランウータンは近未来に絶滅することが予想される絶滅危惧種です。絶滅危惧種は稀少な珍しい動物ではなく、人の残酷さを証明する動物種です。見方を変えると私たちは動物を絶滅に追いやることで、未来を過剰に無秩序に先食いしているともいえます。未来から豊かさを頂いているのだから未来に返していかなければいけない、これが保全だと思います。動物たちの未来は子供たちの未来でもあります。旭山動物園はボルネオへの恩返しプロジェクトをおこなっていますが今回はプロジェクトが生まれるまでのお話です。

「この喧嘩、買ってやろう!」が保全プロジェクトの原点

2007年、旭山動物園は想像もしなかった収容限界を超える来園者が押し寄せました。07年度で304万人の来園者があったのです。連日マスコミに取り上げられ、地方再生の旗頭、地方経済活性化のお手本、経済的な成功が大きく取り上げられるようになりました。

これが「成功」なんだろうか?。そんな漠然とした不安が常に頭をよぎっていた中、ゼリ・ジャパン(現在のボルネオ保全トラスト・ジャパン)の代表、坪内俊憲氏から「オランウータンの施設の見学と、少し話がしたい」とのアポがありました。坪内氏はボルネオやモンゴルなど世界各地で野生動物の保全活動をされている方です。

「動物園否定論者かな?」。当初はそう思いました。ヒトがあふれるオランウータン舎の前で待ち合わせをしました。いきなり「動物園は動物を使ってお金もうけをする場所なのか?。ボルネオオランウータンは絶滅危惧種なのは知っているのか?」「動物園だからこそできる保全活動があるのではないか」と機関銃のように言われました。

「動物園とは何なんだろう」、そう自問自答しながら答えが見つからない自分の背中を押されたように感じました。「このけんか、買ってやろう!」。そう思いました。飼育動物とその動物の故郷を結ぶ懸け橋になろう。動物園の社会的な存在意義のベースをここに置くことを目指そう。「恩返しプロジェクト」の発想はこのときに浮かびました。「一度ボルネオに来て現状を見てみないか」と坪内氏に言われ、「行きましょう」と思わず答えていました。

「保全」という視点で考えた時、現在進行形で進んでいる絶滅危惧種の現状を見なければ「何ができるのか」すら発想できない、そう思いました。

08年1月ボルネオ島、マレーシア国サバ州サンダカンに降り立ちました。雨期でした。車で目的地のキナバタンガン川に向かいました。キナバタンガン川流域は、欧米人にはとても人気の観光地でもあります。豊かな自然、ボルネオゾウ、ボルネオオランウータン、テングザル、サイチョウ……たくさんの野生動物たちを見るのが目的です。

プランテーションに向かない川岸にだけ残るジャングル

目的地の船着き場に着くまでの3時間、アブラヤシのプランテーションが続きました。異様な景色でした。見えない必需品といわれるパーム油を生産するために拡大し続けるプランテーション。絶滅危惧種が増え続ける原因だとは知っていましたが、現実の景色に圧倒されました。ボートに乗り換えて陸路のない宿泊地に向かいました。景色は一変しました。ジャングルです。なるほど、雨期には水没してしまうような陸路がつくれない川岸だけにジャングルが残っている、と気づきました。

マレーシア国サバ州は北海道と同じくらいの面積、世界自然遺産キナバル山をはじめラムサール登録湿地など自然を売りにした観光と、パーム油や森林資源などの第1次産業が経済の中心である点など多くの点で北海道と基盤が似ています。畑と自然林がいきなり隣接している点もそっくりです。

そして当然野生動物による農業被害も同じ構図です。害獣の代表がボルネオゾウとオランウータンです。彼らの未来はさまざまな情報や今後の見通しなどから約20年後には野生下での絶滅の運命が待ち受けています。特にボルネオゾウはほぼすべての個体がサバ州にのみ生息し、多くて1200~2000頭といわれています。

キナバタンガン川をボートで下り宿泊地に向かいました。ジャングルが続くかと思えば不意にアブラヤシの木が川岸まで植えられています。川が増水したときに水につかるかどうか、ほんの数メートルの標高差の違いの結果です。川沿いを移動しながら生活するゾウが害獣にならざるを得ない現実が理解できました。

しかし、ジャングルに一歩足を踏み入れるとそこは、命があふれていました。サルの仲間だけでもカニクイザル、ブタオザル、テングザル、リーフモンキーの仲間、ミューラーテナガザル、ボルネオオランウータンほんの数キロの移動の間に見たり鳴き声を聞けたりします。

動物園で飼育をしていると一頭あたりどのくらいの量の食料を必要とするのかが分かります。ですので、このジャングルは一体どれだけの生産力があるのだろうか、と考えました。熱帯は新たな命(種)が生まれる場所。この圧倒的な包容力が、いい加減さを認め新たな種が生まれ続ける原点なのだと感じました。ただこのプランテーションに取り囲まれたジャングルは、あとほんの少しでバランスを崩しあっという間に崩壊するのではないかとも感じました。

スマホ使いこなす最先端の暮らし、毒蛇やワニと共存

川沿いには、小さなプランテーションや漁を営む人たちが点在して暮らしていました。子供たちはボートで学校に通います。この川にはイリエワニがいて今年も何人か襲われてしまったと聞きました。僕も滞在期間中に何度か姿を目撃しました。他にもニシキヘビ、キングコブラを頂点とする多種の毒ヘビが生息しています。これらいわゆる危険動物を排除せずにヒトの暮らしがあることに気づきました。そうしたなかで皆スマホを使いこなしているのです。

僕たち日本人は黒電話からスマホへと近代化する過程で、都合の悪いものは排除し、自然との接点をなくし、自然を感じるアンテナ感性を失ってきました。自然はいつか自分たちの暮らしの外の世界になりました。イリエワニと共存し最先端のスマホを使いこなす、とてつもない可能性を感じました。

このときはボルネオゾウの鳴き声を聞き、においを嗅ぎ、枝をなぎ倒すばりばりという音を聞く距離まで近づくことはできたのですが姿を見ることはできませんでした。雨期でぬかるむ地面に10センチほどくぼんだ大きなゾウの足跡が続くのですが、僕は膝近くまで埋まってしまい思うように歩くことができません。ゾウの通った跡は、ツタや枝が払われ地面の草が倒れまるでトンネルのようです。大きな頭で進むからです。ゾウというと草原をイメージしがちですが、ゾウはジャングル密林の生き物、そんな印象を強くしました。

さて話が長くなりました。次回はいよいよサバ州野生生物局長との面会、そしてプロジェクト誕生へと続きます。

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