自分を元気にするごほうび 大人のティラミス10選
ミラノ万博機に 定義変わり新種
ティラミスはイタリアの代表的デザートで、「私を元気にして」の意。諸説あるが、18世紀のヴェネチアで夜遊びの際の栄養補給に使われたとみている専門家も少なくない。マスカルポーネチーズと卵をクリーム状にし、コーヒーを染み込ませた細長いフィンガービスケットと層をなす。マルサラ酒を加え、表面にココアパウダーを振る。
日本では1990年前後の「イタメシ」人気に乗って女性誌がこぞって特集し、空前のブームが到来。菓子コーディネーターの村山なおこさんによると、特定のデザートがにわかに注目される「菓子ブーム」の先駆けにもなった。
それから四半世紀。かつては定義が厳密だったが、2015年のミラノ万博を機に「自由に楽しめるようになった」(ラトリエ モトゾー シェフの藤田統三さん)。チーズクリームとスポンジが重なり、表面に何かをかけたものを「ティラミス」と呼称できるようになったという。菓子作りの裾野が広がったことで、リコッタチーズや抹茶、フルーツなど新しいティラミスが生まれている。
リコッタチーズの軽やかな口溶け
商品名 リコッタチーズのティラミス 一般的なティラミスに使われるチーズ「マスカルポーネ」に加え、低脂肪でさっぱりとした甘みがあるイタリア産のリコッタチーズを使用。空気を含ませながら混ぜるなど口溶けの良さを追求した。キリマンジャロのコーヒー豆を粉末にしてチョコレートパウダーに混ぜ、コクと香りを強調。チーズの風味も引き立てた。
「リコッタチーズの軽い味わいで、普通のティラミスより飽きがこない。さっぱりとした後味」(西田郁子さん)、「ヘルシー志向の時代に合っている。Ottimo!(とってもおいしい)」(藤田統三さん)など、素材のチーズの持ち味を生かしたことが評価された。
また「本場イタリアの味に近い」(ベリッシモ・フランチェスコさん)、「ほどよい苦みが大人の味わい。スモーキーなウイスキーに合わせたい」(猫井登さん)という声も。緑色を基調としたパッケージも「おしゃれで大人っぽく、ごほうびスイーツにぴったり」(下園昌江さん)と支持された。
(1)1188円(2)1個(3)http://colorbelle.shop-pro.jp/
こだわりチョコと深煎りコーヒー
真のティラミス(カフェ) チョコレートが主力の洋菓子店らしく、チョコスポンジにこだわる。カカオはエクアドル産アリバ・ナシオナル種。「酸味が少ないカカオを使うと、苦みがありながらもすっきりした味わいになる。マスカルポーネとの相性もいい」とオーナーシェフの山本雅也さん。仕上げにはエスプレッソパウダー。自店抽出の深煎りコーヒーシロップをはじめ、すべて自家製で無着色という。
「コクが深いマスカルポーネのクリームがビターなチョコスポンジと合い、チョコの奥からコーヒーのほろ苦さが押し寄せる。大人の味」(瀬戸理恵子さん)
「キュートな絵柄の瓶にモザイク柄のように詰められた姿がユニーク」(下園さん)、「見た目が美しいだけでなく、食べる際にもクリームと生地が一度にすくいやすくてうれしい」(原亜樹子さん)。「カフェ」のほかに「フランボワーズ」「パッション」がある。
(1)3240円(2)6個(3)http://www.i-chocolat.co.jp/
パリッとフワッの二重層
ティラミス ナチュラルチーズを販売するチーズ専門店がつくるティラミス。イタリア産のマスカルポーネを使用。クリームとスポンジの間にフランス産の薄いビターチョコレートを重ね、一緒に食べると「チョコレートのパリパリ感が柔らかい食感と交互に感じられて飽きない」(川島理さん)。
「スポンジにコーヒーシロップがしっかりしみこんでいて、マスカルポーネクリームとともに口の中でとろけるのが心地よい。透明で層がきれいに見える瓶がかわいらしく、食欲をそそる」(平岩理緒さん)、「ティラミスと一目でわかるデザイン」(村山なおこさん)など、見せ方の工夫も評価された。
(1)650円(2)1個(3)https://www.a-fromage.co.jp/
一体感ある濃厚な味わい
しっとり濃厚ティラミス 地元で愛されるイタリア料理店が添加物を使わずに作る。スポンジは小麦粉を一切使わないグルテンフリーで、小麦アレルギーでも食べられる。「オリジナルのスポンジはマスカルポーネやシロップとよく調和し、より一体感が味わえる」と坂庭隆オーナー。県内の契約養鶏家から届く濃厚な卵とイタリア産のマスカルポーネを使用。「香り良いエスプレッソがたっぷり染み込んだ生地にクリームのコクが絡む。ずっと食べていたい」(原さん)、「完成度が高い。濃厚なので上質な赤ワインと合わせたい」(猫井さん)。
(1)2700円(2)1個(3)http://www.roka-1978.info/
ジェラートで創作 新しい味
レガル・ド・チヒロ ジェラート缶 ティラミス 1963年にコーヒー専門店として創業したパティスリーの新作。自家焙煎(ばいせん)コーヒーをジェラートにしたアイスケーキ版のティラミスで、「飽きの来ない新たな味を」と田中千尋シェフが創作した。スペイン産バレンシアオレンジのジェラートやキャラメルをアクセントにしたほか「ナッツ、コーヒービーンズの食感も楽しい」(並木麻輝子さん)。「むしろ紅茶と合わせ、香りを引き立てたい。缶入りでデコレーションケーキのようにかわいらしく、女性に喜ばれる華やかさ」(平岩さん)とパッケージも評価された。
(1)3240円(2)1個(3)http://www.cafe-tanaka.co.jp/
和洋融合 京都の味わい
絹ごし緑茶てぃらみす お茶や豆乳、白あんなど京都ならではの素材を洋と融合。京都の茶舗・柳桜園の緑茶は抹茶で練り、風味を引き立てた。チーズはあっさりした酸味のあるフロマージュブランを使用。丹波産の大納言小豆と黒豆、北海道産うぐいす豆をあしらい、和の趣を強調した。「和風素材を使っていて見た目も斬新」(鈴木兼介さん)、「クリームは羽のように軽やか。高級和菓子のような包装はサプライズ感がある」(猫井さん)。インターネット販売は4カ月待ち。店頭でも販売している。
(1)1640円(2)1個(3)http://ichijouji-nakatani.com/
甘さ控えめ ダイエット中にも
スリム・ティラミス 1人分(3分の1カット)あたりの糖質が約3グラムと甘さが控えめで、ダイエット中の人にも向く糖質制限ティラミス。砂糖は不使用。サントス・アントワーヌシェフは「甘いものを我慢している人にも食べてもらいたい」と話す。チョコレートスポンジ生地にはコーヒーをたっぷり染み込ませ、山形県蔵王産のマスカルポーネを使ったムースは滑らかな食感。スプーンで全ての層をすくって一口で食べるのがおすすめだ。「カットしたときの断面がとても美しい」(鈴木さん)。
(1)1890円(2)1個(3)https://www.ecolecriollo.co.jp/
受注後にひく新鮮な抹茶
宇治抹茶ティラミス 京都府南部、木津川市の茶農家が作るティラミス。甘みがあり、マスカルポーネとの相性もいい茶の品種「おくみどり」を使用。茶の苗を植えるところから収穫、加工までを自社で担う。受注後に石臼で抹茶をひくため、新鮮な抹茶の風味が味わえる。「抹茶の味が濃厚で、ムースとのバランスもよい」(川島さん)、「香りのよさや苦みを存分に生かしつつ、ティラミスらしさもしっかり表現している」(原さん)など、抹茶の風味を評価する専門家が多かった。
(1)1650円(2)3個(3)https://www.moritaseicha.com/
「爽やかな渋み」生むバランス
宇治てぃらみす(宇治抹茶) 世界遺産、平等院の近くに店舗を構える宇治茶専門店の人気商品。石臼でひいた抹茶のほろ苦さとマスカルポーネ、スポンジに浸した抹茶シロップの甘みのバランスにこだわった。「抹茶のほろ苦さがクリームのミルキーな風味と合わさり、爽やかな渋みを感じる。食べる前から期待感が膨らむ」(下園さん)、「抹茶の緑色のスポンジとクリームの色のコントラストがきれい」(村山さん)。「宇治抹茶」のほか、「ほうじ茶」「玄米茶」の3つの味が楽しめるセットも販売。
(1)4320円(2)6個(3)https://www.itohkyuemon.co.jp/
滑らかで繊細 追求した一品
シルキーティラミス・オリジナル ティラミス専門店が滑らかな口溶けと繊細な甘さを追求した一品。北海道産マスカルポーネや生乳、青森県産の卵など国産食材にもこだわる。カカオ75%のビターチョコレートで仕上げ、ヘーゼルナッツをあしらった。フレーバーは「オリジナル」のほか「ストロベリー」なども人気。「甘みと苦みのバランスがいい」(並木さん)、「シックな『大人用スイーツ』。食感は軽やかでディナー後でもペロリと食べられそう。甘いデザートワインと合わせたい」(猫井さん)。
(1)1060円(2)2個(3)http://aquila-sweets.jp/
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ランキングの見方 数字は選者の評価を点数化。店名(所在地)、本文冒頭に商品名(1)税込み価格(送料別)(2)個数(3)店・販売サイトのURL。スタイリングは西崎弥沙、撮影は岡田真。
調査の方法 専門家の推薦を基に、取り寄せが可能なティラミス21品をリストアップして試食会を開催。専門家12人が試食し、スイーツとしての完成度、見た目のワクワク感、自分へのごほうびとして食べたいかなどの観点で1~10位まで順位を付けてもらい、編集部で集計した。
今週の専門家 ▽川島理(ファミリーマート デリカ食品部デザート・アイスグループ)▽下園昌江(お菓子研究家)▽鈴木兼介(東京製菓学校教育部洋菓子課)▽瀬戸理恵子(フードエディター・ライター)▽並木麻輝子(料理ジャーナリスト)▽西田郁子(チーズルームアカデミー専任講師)▽猫井登(お菓子の歴史研究家)▽原亜樹子(菓子文化研究家)▽平岩理緒(「幸せのケーキ共和国」主宰)▽藤田統三(ラトリエ モトゾー シェフ・イタリア菓子歴史研究家)▽ベリッシモ・フランチェスコ(料理研究家)▽村山なおこ(菓子コーディネーター)=敬称略、五十音順
[NIKKEIプラス1 2018年10月6日付]
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