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サラダにパン・ビタミンも ちくわの穴の深遠な世界

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NIKKEI STYLE

コンビニエンスストアの冬の定番商品「おでん」がよく売れるのは、実は夏が終わった9月から10月にかけてだとか。最も寒い1月や2月ではなく、夏が終わって気温が急に下がった秋口のほうが、人は温かいものが食べたくなるもののようである。

おでんの具といえば欠かせないのが「ちくわ」。説明するまでもなく、魚のすり身を竹などの棒に巻きつけて焼くか蒸すかした加工食品である。今回は「予想外の組み合わせでローカルから火がつき全国区の人気になるちくわの世界」をご紹介しよう。

ちくわはなんとも地味な存在である。おでんの好きな具ランキングでもダイコンと卵が不動の1位と2位で、ちくわはたいてい3位だ。コスパ最強のコンビニ弁当「のり弁」でも必ず「ちくわの磯辺揚げ」が添えられるが、かつおぶしとのりを乗せたご飯が主役で、メインおかずは魚のフライ。ここでも3番手的扱いである。

その起源をたどってみると、衝撃的な事実が判明した。ちくわはその誕生ストーリーからして、主役を奪われるという悲しい歴史があったのである。

ちくわの誕生時期は定かではないが、書物に最初に登場するのは平安時代。「類聚雑要抄」という古文書に、永久3年(1115年)、関白右大臣の引っ越し祝いの宴に出されたとの記述がある。

その食べ物は形状からして「ちくわ」のことなのだが、なぜか「蒲鉾」との名前で登場する。そう、ちくわはこの時代、「かまぼこ」と呼ばれていたのだ。というのも、その形が「蒲の穂」に似ているからである。

そして、後の安土桃山時代に板の上に魚のすり身を乗せて蒸す、今でいう「かまぼこ」が誕生した。これを「板かまぼこ」と呼び、これまでのかまぼこは形状が竹を切ったものに似ているということから「ちくわ(=竹輪)かまぼこ」と呼ぶようになった。

それがいつしか、それぞれ「かまぼこ」「ちくわ」と呼ばれるように。結果的に後から出てきた新参者に名前を奪われる形になったのである。

江戸時代まではどちらも高級品であったが、今ではかまぼこはおせち料理など「ハレ」の日に食べるイメージ、方やおでんやノリ弁に使われる安価なイメージ。その扱いにも大きな差がついてしまった。

しかし、安価だからこそ食卓に上る頻度は高く、人々に親しまれている。それに、ちくわにはほかの練り物製品にはない、大きな強みがある。

それは「穴」である。穴があったら入りたい、ではなく、何かを詰めてみたくなるのが人情というもの。あの穴がアレンジ料理の創作意欲をかきたてる。こうして意外な組み合わせが各地で生まれ、地方でソウルフードとして定着しているケースが見受けられる。

たとえば、熊本県には「ちくわサラダ」なるローカル総菜がある。これは穴にポテトサラダを詰め、さらに衣をつけてカラリと揚げたボリューミーなおかずだ。

元祖は熊本県を中心に九州で140店舗近くの弁当・総菜店を展開する「ヒライ」。今から30年以上前、うまいと評判だった同店のポテトサラダをみんなが好きなちくわに詰めたら最高の総菜になるのではないかという発想から生まれたとか。

これはその後、ミニストップで「ちくわ天」の名前で発売されたり、冷凍食品になったりと全国区に。

北海道では「ちくわパン」が有名だ。こちらは札幌を中心に9店舗を構えるベーカリー「どんぐり」が発祥。1980年代に「ちくわをパンに入れたらおもしろいんじゃない?」という客からの提案がキッカケで誕生したという。

和と洋の素材で一見ミスマッチに思えるが、穴の中にマヨネーズあえのツナサラダが入っていて、いい媒介役になっている。やはり穴の存在が要のようである。

こちらも10年ほど前から大手の製パン会社によって商品化され、コンビニ各社で販売されるようになった。穴の中身はチェダーチーズ、クリームチーズなど、ちょっとずつ変化している。

意外な穴の使い方もある。

私が住んでいる長野県は「ちくわ偏愛」県として有名である。これは石川県の鮮魚問屋であった杉與商店(現・水産練製品加工販売のスギヨ)が、古くから能登のブリが越中(今の富山県)からブリ街道を通って信州に送られていたことにヒントを得て、大正時代にちくわの穴に塩を詰めて長野県に送ったことに端を発する。

四方を山に囲まれた信州で貴重な海のたんぱく源と塩のセットは大ヒット商品に。昭和になってビタミンAとDを加えた「ビタミンちくわ」としてバージョンアップされ、現在までロングセラーとなっている。私も移住したてのころはスーパーの練り物コーナーにビタミンちくわだけが山積みになっていることに驚いたものだ。

水産加工食品メーカーのカネテツデリカフーズのちくわへの「攻めっぷり」も見逃せない。同社は2015年12月、JR新大阪駅構内に練り物専門ショップ「ネルサイユ宮殿」を期間限定でオープンし、現在は兵庫・神戸市のちくわ・かまぼこ手づくり体験施設「てっちゃん工房」内に移転している(ネルサイユ宮殿の公式ホームページでの販売も)。

同社のキャラクター「てっちゃん」が女装したかのような「マリー・アントワ・てっちゃん」が「パンがなければちくわを食べればいいじゃない」とお出迎えする突き抜け方は「ちくわって地味」なんてもはや言っていられない。

商品ラインアップも超個性的で、過去にはちくわをクロワッサン生地で包んだ「チクワッサン」、穴にカレーやかぼちゃサラダを詰めた「カレーちくわ」「パンプキンサラダちくわ」のほか、ちくわにレーズンとマンゴーを入れたものもあったほど。

「弊社が創業90年を迎えるにあたり、既存の練り物の枠を超えた自由な発想でこれまでにない新たな『練り物の可能性』を新たな形で多くの方に知っていただきたいと考え、店舗を出店いたしました。これまでのヘビーユーザー層とは違う、若年層のお客さまに向けた、新しいチャネルでの挑戦でしたので、ネルサイユ宮殿のためだけに専用の商品を開発しました」(カネテツデリカフーズ商品企画室)。

現在の人気商品は薄くスライスしたちくわを乾燥させて作った「マリーのパリパリ」とか。穴に詰めるだけではない、ちくわの「進化形」である。

同社では11月11日を「ちくわの日」として独自に制定。練り製品の認知拡大に努めていきたいという。

地味なイメージが払拭され、ローカルから全国区のヒーローが生まれるちくわ、今後どんなアレンジが飛び出してくるのか、楽しみである。

(ライター 柏木珠希)

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