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日本の女性登用は的外れ 女性的資質で考える新組織論 『ニューエリート』のピョートル氏、女性リーダーのマリア氏と語る

2018/10/12

■管理職に必要不可欠な資質「女性性」とは

ピョートル:誰もがパブリックな面とプライベートな面がありますが、なかでも秘密を抱えている部分は、行動面に大きな影響を与えています。たとえば、性的少数者(LGBT)の人がカミングアウトできないと、自分の資質を隠すことになり、本来の能力が発揮できなくなります。つまり、組織においては本音が言える環境が大事ということなのです。LGBTに限らず、男性が支配する企業社会においては、女性は少数者です。女性は本音を言えず、女性固有の問題に目をつぶり、男性のように振る舞わなくては成功しない。そこには同様の問題が存在しています。たとえ女性が管理職に登用されても多様性は生まれないのです。そこでマリアが提起しているのが「Feminine(女性性)」ですね。

マリア:はい。女性性というのは資質のことであって、性別のことではありません。女性の中に多くありますが、男性のなかにもあるものなのです。女性性は、結果よりもプロセスを大切にする資質です。そして、物事を深く掘り下げて広げていく力や人を育むエネルギーも持ち合わせています。

――女性性はどのような局面で発揮されることが多いのでしょうか?

マリア:会議の場で例えると、女性性というのはその場で起きていることを受け入れる受容的な力です。そして女性性が持つ資質の重要な部分は「共感」です。交流サイト(SNS)が広がっているいまの時代は、企業はサービスを与えるユーザーとすごく近い関係にあります。だからこそ、流動的に対応できる「共感」という要素が重要だといえます。それから、女性性の資質として挙げられるのが「直感」です。優れたリーダーというのは、優れた直感を持っているものですが、それは女性性の部分と深く関わっています。優れたリーダーシップは、独断専行ではなく、深い聞き取り能力から来ているものだといえます。

ピョートル:会社で役員になるような女性にはある特徴があります。これは日本に限らず、ほかの国でも見受けられることですが、成功している女性というのは、すごく結果主義です。彼女たちがあまりにも硬直的で理性的な関係を強制されすぎて、自分のなかにある女性性を受け入れることができていない状況に置かれているのだと思います。

■ダイナミズムのカギ握る「女性性の影」

マリア:男性性が中心の社会の中で、女性性は影に追いやられてきました。結果的に、女性性が「ネガティブな影響」をもたらしてしまっているという現状があります。私はそれを「Feminine Shadow(女性性の影)」と呼んでいます。女性性の影は、無意識のものであり、その影の部分に気がついていないときには、ネガティブな形で表れてしまうこともあります。

例えば、マーケティング戦略で達成しなければいけない目標があったとします。男性性社会は、とにかくその目標を達成することにまい進します。しかし、そこでは「この目標で本当にいいのか」「人が求めてないのではないのか」「私はあまりわくわくしないが大丈夫か」といった女性性的な感情や違和感は封じ込められてしまう。女性性からくる感覚がよしとされていないし、発言も求められない。だから、その気持ちは影にまわってしまうのです。

しかし、そうやって影に追いやられた女性性は消えるわけではないので、結果的に「目標に向けた仕事が全然はかどらない」「アウトプットの質が著しく低下する」「そういう雰囲気が結果的にチームの士気を下げる」というネガティブな影響を引き起こしてしまうことがあるのです。できないことを人に頼り、助けを請うといった女性性が男性社会の中では表に出せないから、その気持ちが影にまわってしまう。表で出すことをさえぎられた女性性は、消えることはないので、より複雑なコミュニケーションというネガティブな形で結局表に出てしまうのです。そうなるとただただ混乱してしまうことになりますよね。そしてみんながゴールに向かっている動きを止めてしまうことにもつながってしまうのです。

また女性性の影として表れるものに怒りの感情があります。これは、気がついていないと悪い方向に出てしまうこともあります。「女性は感情的になりがちだ」という誤解を生みます。しかし、きちんとコントロールされた怒りであれば、勇気を持ったお母さん熊のような強い力になります。それによって、大きなリスクがあっても会社が新たなチャレンジをする原動力にもなりますし、社員を守る力にもつながるのです。

このように共感やコミュニケーション、クリエイティビティーという優れた感性である女性性は、それを発揮できない環境に置かれると女性性の影としてネガティブな問題を引き起こすことがあります。しかし、逆に女性性を大切にしてそれを生かすことができる環境を与えられれば、企業活動においては非常に強い力となるのです。ダイバーシティの本来の意義は、こうした優れた感性をすくい上げ、その感性に活躍の場を与え、組織にダイナミズムを与えていくことだと思います。

■企業活動における女性性と男性性

マリア:一方、女性性を理解するためには、その対となる「男性性」という概念も理解することが重要です。男性性というのは従来の企業活動では前面に出ていた概念です。結果やゴールを最重視して、それをがむしゃらになし遂げようとする力が男性性の源です。重要なポイントを指摘していく力があるいえます。つまり、女性性が過程を重要視するのに対して、男性性は結果やゴールを重要視しているということです。

ピョートル:女性性リーダーシップは「共感型リーダーシップ」、男性性リーダーシップは「結果重視型リーダーシップ」といえるかもしれませんね。

マリア:私たちが伝えたいのは、「女性性のリーダーシップをもう少し持ちましょう」ということだけで、女性性だけではダメです。あくまでも、男性性の持つ意思決定を進めていく力と女性性の持つ共感とが統合されたリーダーシップが必要だということを忘れないでほしいと思います。

ピョートル:私は、「リーダーとして必要なのは、何をすべきかということよりも、何をすべきではないか、ということをわかっていることである」と考えています。「何をすべきか」というのは男性性に依存する部分、「何をすべきではないか」というのは女性性に関わる部分といえるかもしれません。TPOによって自分の中の女性性と男性性を使い分けることがリーダーの条件といえるかもしれないですね。

マリア:その通りです。もちろん、どこにたどり着くかということや早く前に進んで行くことももちろん大切ではありますが、その過程でどういったクリエイティビティーを生み出せるかということも大事です。結果だけにとらわれていると、表面的なことだけに取り組むことになり、その奥にあるものを見落としてしまう可能性があるからです。

ピョートル:ユーザーと会社とをつなぐことが現代のビジネスのポイントでもあるので、女性性のあるリーダーシップでコミュニティーを作る能力というのが求められていると思います。たとえば、米エアビーアンドビーや米フェイスブック、それからメルカリにも「コミュニティー・マネージャー」という職種があるほど。つまり、共感に基づいたビジネスモデルや働き方でないといまは生き残れない時代だということなのです。僕が経営するプロノイア・グループにもmirai forumというコミュニティーがあり、参加者と一緒に「未来創造」をするために毎月イベントを開催しています。

マリア:現在のビジネスで成功するためには、コミュニティーをつくることが求められていますが、そのなかでどうしたら人とつながることができるのか、どうしたらうまく感情を表現することができるのか、というのを改めて学ぶべきです。

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