人間なら大けが必至 インドの聖なるサルが大ジャンプ

日経ナショナル ジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィック日本版

送電線の鉄塔のてっぺんで立ち往生するサルが、大ジャンプで地面へと飛び降りた。この映像は、インド中央部のハディヤ村で撮影されたもの。主役のサルは、神の使者と考えられ、聖なるサルと言われるハヌマンラングールだ。

首に付いたロープが鉄塔のどこかに絡まっているらしく、下に降りられずにいた。2日後、動物救助団体のボランティア・チームが、このサルをロープから解いて、助け出そうと試みた。地元警官の話によると、「サルの救助活動のために」電力の供給を3時間以上止めていたという。

ところが、救助チームが鉄塔を登り始めると、サルはうろたえだした。自分を助けるために登ってきたとは知らず、登ってくる人間を脅威に感じたのだろう。そして切羽詰まったサルは、ついに地面へと飛び降りた。

高さは20メートルほどで、マンションの7階に相当する。ふだんサルが飛び降りる高さをはるかに上回っていた。

そして、20メートルを飛び降りたサルは足から地面に着地して、何ごともなかったかのように逃げ去ったのだ。人間なら、大腿骨を骨折するか脊椎に損傷を負っているだろう。

「ハヌマンラングールは、ジャンプをするのに非常に適した体をしていますから、長い距離をジャンプしたり、体をバネのように使って着地したりするのがとても上手なんです」と、米ノートルダム大学の人類学者アグスティン・フエンテス氏は動画を見て語った。「完璧な着地ができたのは、ラッキーでしたね」

だが、動物の運動を力学的に研究する米イリノイ大学のジョン・デイビッド・ポーク氏の意見は違う。サルはけがをした可能性もあると言うのだ。「逃げ出す時には興奮していますから、その時はわからなくても、後で気付くこともあります」

ポーク氏は続けて「ハヌマンラングールは比較的長い後ろ脚を持ち、それを大きく曲げて使うのに慣れています。脚が長ければ、尻やひざ、かかとの筋肉の作用時間を長くでき、着地の際に関節の損傷を免れたのかもしれません」

動物を助けようとする行為と、その行為が逆にその動物を追いやる危険な状況。両者のバランスをとるのは難しい。今回は期せずして、良い結果に恵まれたと言えるだろう。

(日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2018年8月23日付記事を再構成]

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