もしかして不死? 生きた化石ウミシダ、驚異の生命力
2億年前から生息しているとされる「生きた化石」ウミシダ。姿かたちからシダの名が付いているが、植物ではなくヒトデと同じ棘皮動物だ。このウミシダが、将来、浅瀬の王者になる日が来るかもしれない。今回は、ウミシダの生命力を映像とともに紹介しよう。
カナダ、ブリティッシュコロンビア大学のアンジェラ・スティーブンソン氏は、10年以上前からウミシダやウミユリなどのウミユリ綱の動物を研究している。現在は、フィリピンのネグロスオリエンタル州を拠点として、沖合のサンゴ礁に大量に生息するウミシダの観察や実験を行っている。
ウミシダの生命力の一つが再生力で、腕は切られても再生する。ウミユリ綱の動物の中には、150本もの腕を生やすことがある。スティーブンソン氏のウェブサイトによれば、切られた腕は1日1ミリにも満たないペースで再生するという。
「ウミシダの寿命はわかりませんが、私は、もしかすると不死なのではないかと思いはじめています。ほかの部分がどんなに傷ついても、中背板(中央にある円盤)さえ無事なら、元どおりの大きさに戻れるのです」とスティーブンソン氏。
現在、海は着実に温暖化している。米国海洋大気局(NOAA)が四半期ごとに発表している「気候の現状:世界の気候報告書」2018年1~3月分によると、世界の海洋に蓄積された熱量が1955年の測定開始以来最高を記録したという。この傾向が逆戻りする気配はない。
「ウミシダの中には、温暖化が有利にはたらく種がいます」とスティーブンソン氏はさらに続ける。彼女の実験では、水温を2℃上げたところ、腕の再生スピードが速くなったという。一方、海水温の上昇は、ウミシダの幼生を食べる生物にとっては打撃だ。温暖化で、現在より多くのウミシダが成体まで成長できるようになると考えられる。
温暖化が進む海を、ウミシダは陽気に泳ぎつづける。海水温の上昇でサンゴが死んでいっても、ウミシダにはなんの問題もないだろうとスティーブンソン氏は言う。「彼らに必要なのは、食物を運んでくれる海流と着生するための足場だけです。その足場はなんでもよく、サンゴである必要はないのです」
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2018年8月28日付記事を再構成]
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