必要なときにIT駆使 幸福感高める新しい学びとはリクルートワークス研究所主任研究員 辰巳哲子氏(3)

1つは、学習は個人のタイミング、場所、レベル、学習スタイルに合わせた「オーダーメード」になるということです。ITの進化に伴い、必要なときに都合のよい場所や時間を選んで学べるようになります。学習環境デザインに詳しい米スタンフォード大学のブリジット・バロン氏は「今、学ぼうとしている人は、子どもか大人かを問わず、広くいろいろな技術を使って対象を選んでいます。なかでもユーチューブやビデオはとても重要で、それを見て『新しいことを学びたい』という刺激を受けていることがわかっています」と話します。

これまで何をどのように学ぶかは、学校が決めていました。しかし、今後は自分にあったやり方を選ぶ傾向が強まるでしょう。自分のレベルに合わせ、何から学べばいいかを勧める機能を持つ、ウェブ上の学習コンテンツも登場しています。「子ども向け」「高校生向け」といったコンテンツを提供する側の基準は意味を失い、何を学びたいのか、どれくらいわかっているか、という個人の事情に合わせて選択するようになるのです。

2つ目は、今後の学びはコンピューターやAIと一緒にするようになるという点です。人間同士の場合、共に何かをするには相手の能力を知らなければなりません。コンピューターと人も、それぞれ得意と苦手を考える機会が増えていくでしょう。米国のAI研究の権威、オレン・エツィオーニ氏は、今後の学びについて「コンピューターに何ができ、何ができないかを理解していること、簡単なプログラムが書けること。この2つのスキルが大切になります」と指摘しています。

3つ目のポイントは、今後の学びは楽しむもので、「幸せになるために欠かせないツール」になるということです。

無我夢中がもたらす充実感

学びは、どうして「幸せ」に通じるのでしょう。米国の心理学者ミハイ・チクセントミハイ氏は、人間が何かに夢中で取り組むような精神状態を「フロー」と定義し、その経験で深い喜び、幸福を感じるとしています。「一つの活動に深く没入しているので他の何ものも問題とならなくなる状態、その経験それ自体が非常に楽しいので、純粋にそれをするということのために多くの時間や労力を費やすような状態」(同氏著「フロー体験 喜びの現象学」=世界思想社)というフロー状態を学びから得るとすれば、それは自分が強い関心を持つテーマについて、自分に合ったやり方でやるときでしょう。

ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧