時代映すランジェリー セクシーと快適さは共存できる
仏オーバドゥ副社長に聞く
胸を形よく見せるといった機能性重視の時代から、締め付け感のないワイヤレスブラへ――。日本の下着市場はファッション同様、カジュアル化が進んでいるようにみえる。こうした流れは世界的な潮流なのか。創設60周年を迎えたフランスの高級ランジェリーブランド「オーバドゥ」の副社長、マルティナ・ブラウンさんに、ランジェリーへのニーズの変化、世界各国の意識の違いについて聞いた。
ランジェリーへの意識が高いフランス
――女性の社会進出は下着革命を促してきました。今はどんな変化が表れていますか。
「20世紀初頭のデザイナーであるポワレやシャネルのスタイル、あるいはウーマンリブ。これらが、コルセットやガーターベルトから女性を解放しました。ランジェリーには時代の動きが反映されるものです。ここ20年間は一つの転換期ともいえるでしょう。女性の一段の社会進出にともない、メーカーはより快適であることにフォーカスしたものづくりをするようになったのです」
――日本では、胸のボリュームをアップさせる、ヒップを持ち上げるといった機能をうたう商品よりも、ソフトカップ付きブラトップなどカジュアルな下着が目立ちます。
「日本の店頭を見ると明らかに、締め付けないワイヤレスブラの存在感が高まっています。いま求められる下着のキーワードは『柔らかさ』です。ブラジャーは約30のパーツから作られていますが、それぞれの素材が進化しています。大きなトレンドではストラップが非常に柔らかいものに変わっていること。また、自然なノンワイヤの三角ブラであるブラレットも人気です。背中のホックをなくしたものなどナチュラルブラがマーケットに十分浸透しています。オーバドゥのDNAであるセクシーさと、イノベーションを駆使した快適さを共存させた商品が求められています」
――フランスでランジェリーブランドが発展した背景には何があるのでしょうか。
「ヨーロッパでランジェリーに対する意識が一番高いのがフランスです。フランスの女性はスポーツやエステで女らしい体をつくるよりも、ランジェリーで自身をラッピングすることで自分の体を女らしく見せる、という感覚を持ってきたからでしょう。男性からパートナーの女性へ下着を贈るという習慣も根付いています。1958年に創業したオーバドゥは繊細なレースや刺しゅう、独特なカラーリングで、女性と男性の魅惑的な関係を意識させるものづくりが特徴です」
より自然体でいることを選ぶ現代女性
――国によって下着に対する意識の違いはあるのですか。
「同じ欧州でもまったく違います。フランスではヘアやネイル、衣服同様、ランジェリーでも美しさが最も重視されます。ドイツの女性はナチュラルなものを好み、ランジェリーの要素としては美よりも快適さが必要とされます。米国はよりスポーティーなものを求める傾向があります。日本人女性は入浴の際に体をケアし、そこで女性らしさや自分の体を発見するという特別な文化を持っている。女性らしさを大事にしていると思います」
――下着の付け方にもお国柄は出るのでしょうか。
「フランスでは白いブラウスの下に黒いランジェリーが透けたり、カップのレースが服に響いたりしていても気にしません。米国では公的な場でストラップやレースが見えるのはタブーなので、しっかりとカップが入った響かないタイプのものが支持されます。ただ最近、米国でブラジャーを付けないノーブラスタイルが広がっていることに注目しています」
「世界的な流れとしては豊胸手術をはじめとする、美容整形手術が減少しています。米国をはじめ、現代の女性はより自然体でいることを選ぶようになってきているのではないでしょうか」
――日本では先月末に改装オープンした日本橋高島屋SCをはじめ、来春にかけて下着売り場を強化する百貨店が増えそうです。
「3年前にこの会社に入り、グローバルブランドに育てるための戦略を進めています。目下、力を入れているのがどんな体形にも合うシェイプの開発です。より多くの人に、日常的に、フランス的なセクシーさと快適さが共存する商品を楽しんでもらいたい。欧州に続いて強化するのが日本です。下着は食事と一緒で味わってみないと分かりません。女性の体の美しさを表現した印象的なビジュアルなどで、新しい顧客とのコミュニケーションを図ろうと思っています」
(聞き手は編集委員 松本和佳)
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