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タコの行動に人間と共通点 合成麻薬投与実験で判明

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/10/8

ナショナルジオグラフィック日本版

最新の実験で使われた種と同じ、カリフォルニア・ツースポットタコ(Octopus bimaculoides)(PHOTOGRAPH BY DAVID LIITTSCHWAGER, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

タコと人間には特定の社会行動に関して、同じ脳の仕組みがあるとする研究結果を、米ジョンズ・ホプキンス大学の研究者が2018年9月20日付けの学術誌「カレントバイオロジー」で発表した。

この研究の方法は変わっていて、合成麻薬MDMAをタコに投与したあとの反応を調べたものだ。薬物摂取後にタコが見せた反応は、人間が見せるものとかなり似ていたという。タコに薬物を与えることも議論があるだろうし、そもそも系統的にみてタコは人間から遠い動物だ。タコの研究から、私たち何を得られるのだろう?

話は3年ほど前に遡る。ある研究チームがカリフォルニア・ツースポットタコ(Octopus bimaculoides)のゲノムを解読。その後の研究で人間のゲノムと配列を比較したところ、両者は5億年前に分かれたにもかかわらず、同一な領域があることが分かった。その共通する部分には、社会的行動にかかわる特定の神経伝達物質(ニューロン間で信号を送る脳内の化学物質)の伝達に関するものが含まれていることが分かった。

この類似性が実際の行動に現れるか試したのが、今回の発表されたジョンズ・ホプキンス大学の研究チームの実験だ。カリフォルニア・ツースポットタコ4匹にMDMAを投与した。このタコは社会性がほとんどない。しかし、ドラッグを投与されたタコはリラックスして、投与前よりも仲間同士で触れ合うことが多くなった。

論文の筆頭著者で、同大学の神経科学者であるグル・ドーレン氏は、合成麻薬を投与されたタコは隣のケージのタコと触れ合おうとして「ケージに抱きついたり、口にあたる部位をケージに押し付けたりする傾向が見られました」と話す。「これはMDMAを摂取した時の人間の反応にかなり似ています。人間もしきりに互いに触れ合おうとするようになりますから」

つまり、実験の結果、ヒトとタコははるか昔に進化の上では別々の道に進んだにもかかわらず、脳の中の社会的行動をつかさどる部分は変わっていないことが示唆されたことになる。

■タコと人間、違いと共通性

実はドーレン氏のタコへの関心はもっと広い。まずタコは分類的にはナメクジに近いのだが、驚くほど賢い。水族館の水槽から脱走する、ガラスの壁が割れるほど強く岩を打ち付けるといったことは日常的に起きている。

生物としては、見かけ以上に人間とタコは大いにかけ離れている。知能を生む脳の構造を見ても、タコには哺乳類のような大脳皮質はない。それでも、タコは驚異的な認知能力があるわけだ。

「エイリアンの知能を研究するみたいな感じです」とドーレン氏。「複雑な認知行動を支える神経系を作り上げる『ルール』について、新たに見つかることがきっとあると考えています。人間の脳は複雑で、研究では別の脳の組織に悩まされることがありますが、タコの研究ならそうしたことはありません」

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