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広がる女性の再雇用 古巣でのびのび、管理職復帰も

2018/10/2

■人手不足が背景、管理職での登用も

「再雇用してくれた会社に恩返ししたい」と話す帝人ファーマの鳥居知子さん(東京・千代田区)

再雇用制度自体は決して新しい仕組みではない。ただ企業の捉え方は大きく変わった。かつては家庭の事情で辞めざるを得なかった社員を救済する福利厚生的な側面が強かった。だが最近は人手不足を背景に採用戦略の一つに位置づけ、企業は再雇用者に即戦力の働きを期待している。

帝人ファーマ医薬事業開発部アウトライセンスグループ統括の鳥居知子さん(52)は17年9月に再雇用された。夫が12年に英国転勤になり、退職して2人の子どもと一緒に現地に渡った。5年ぶりの復帰だが、立場は当時と同じ管理職だ。「市場環境や社内情勢が変わり、感覚を取り戻すのが大変だけど、再雇用してくれた会社の期待に応えたい」と話す。

大学院で薬学を学び、1992年に入社した。以来、医薬部門一筋でキャリアを積んだ。ずっと働くつもりだったが、夫に予想外の海外転勤辞令が出て、やむなく退職した。ただ英国滞在中に現地の大学で医療・ヘルスの講義を傍聴するなど自己研さんに務めた。17年夏に夫に帰国辞令が出ると再就職活動を開始。再雇用制度があると知り、「やっぱりもう一度帝人で働きたい」と登録。在籍時代の実績も評価され、スムーズに再雇用が決まった。

専業主婦として過ごした5年をブランクと見る向きもある。だが鳥居さんは前向きにとらえている。「会社を辞めたからこそ、医療・ヘルスの国際事情を学べた。この経験や知識は仕事にきっと生かせる」

■再雇用者向けの採用サイト

17年の有効求人倍率は1.50倍で高度経済成長期の70年代以来、44年ぶりの高水準だ。人材確保に企業は苦慮しており、再雇用で優秀な人材を呼び戻すために工夫を凝らす。損保ジャパン日本興亜は16年7月に制度を改定。それまでは再雇用しても在職時代の処遇・待遇は考慮せず、ゼロからの再スタートだったが、原則退職時と同条件で戻すようにした。「特に地方は人手不足が顕著。優秀な人材が戻ってくれるように魅力的な制度に変えた」(同社)

日本電産やゼブラ、大京グループは再雇用者向けの専用採用サイトをつくった。ゼブラでは対象者全員に登録通知書を配布。そこに記された個別IDを応募フォームに入力すれば採用・選考がスムーズに進む。昨年10月に制度を導入したばかりだが、すでに1人が再雇用されているという。

国も17年度に助成金制度を新設し、再雇用を後押ししている。妊娠・出産や介護などを理由に退職した元社員を再雇用した場合、中小企業は1人当たり最高48万円、大企業は同36万円を支給する。厚生労働省は19年度政府予算概算要求で10万人分に相当する約150億円を計上した。「元のキャリアを継続できる上、会社もゼロから人材育成するコストがかからない。働く側と雇う側、双方に利点のある仕組みだ」(同省職業家庭両立課)と強調する。

■一歩踏み出す勇気を ~取材を終えて~

女性活躍推進法に基づき多くの企業は女性管理職の登用目標を立てた。ただ達成は容易ではない。企業はその一因に「該当年齢の女性社員がいない」ことを挙げる。管理職を任せる以上、相応の経験と社歴が求められる。ただ国の統計データなどでみると出産退社が劇的に減ったのは2010年以降。それまではせっかく新卒採用し、育てた女性社員が出産・子育てで職場を去っていた。ちょうど今、多くの会社で管理職適齢期に相当する女性社員が枯渇している。

今回取材した企業の中にも再雇用女性を管理職候補として見ているという意見を聞いた。ヘッドハンティングなどで外部人材を新規採用するよりも、個別の企業風土を理解しているので登用するのも安心らしい。ブランクが長くなるほど働く自信を失いがちだ。だが企業もかつて退職した女性社員に期待の目を向けている。勇気を持って一歩踏み出せば道は開ける。

(編集委員 石塚由紀夫)

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