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「減額」だけではない 年金繰り上げの落とし穴

2018/10/6

「繰り上げ後、以前からあった病気やケガが悪化しても障害基礎年金を受け取ることができない」(相川氏)ことにも要注意。障害基礎年金は初診日が65歳前であることが要件だが、繰り上げ以降は受給上の年齢が65歳になったとみなされてしまう。障害基礎年金は1級なら年に100万円弱と大きい。

■額面ほど手取りは増えず

老齢基礎年金は満額となる40年納めている人は少なく、満額に近づけるために60歳以降任意加入できる。1年の加入で年金が年2万円弱増え、受給開始後10年強で納付保険料より受給額の方が多くなる。しかし繰り上げ請求していると、任意加入もできない。

一方の繰り下げ受給にも注意点はある。1か月繰り下げるごとに0.7%の増額で、5年なら42%増だ。どの年齢まで繰り下げても、65歳からもらうのに比べて約12年で繰り下げ後の受給額が上回る。

しかし年金額が増えると税金や社会保険料の比率が高まることも多く、その場合、手取りは額面ほど増えない。自治体によって異なるが東京都区部の複数区の例では、60代後半で額面200万円の人が、5年繰り下げて額面284万円になっても手取りは240万円強。このため手取りベースでは先ほどの損益分岐点が約12年から16年に延びる。

■専門家「勧めない」

原則65歳以降、妻が65歳になるまで年40万円弱もらえるのが年金版「家族手当」とも言える加給年金。厚生年金とセットなので厚生年金を繰り下げるともらえない。「避けたい場合は基礎年金だけ繰り下げるのも選択肢」(社会保険労務士の井戸美枝氏)

井戸氏は「繰り上げ・繰り下げともに制度を良く知って判断すべきだ。特に繰り上げはデメリットが多く通常は勧めない」と指摘している。

(編集委員 田村正之)

[日本経済新聞朝刊2018年9月29日付]

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