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頼る勇気・頼られる準備 がんとの共生で必要なこと がんになっても働き続けたい~桜井なおみさん(下)

日経Gooday

2018/10/11

最近では、国立がん研究センターの患者さん120人ほどに使ってもらった結果を踏まえて、がん患者さんが自分の症状や体調、気持ちを記録できるスマートフォンアプリ「tomosnote(トモスノート)」の開発にオブザーバー的な立場で関わりました。アプリは第一段階をリリース済みで、現在も改良中です。研究中、アプリを使用した人の中には、つらいときに家族に言えないような心の内をつぶやく人もあり、気持ちを受け止める場が必要だと実感しています。SNS機能を載せているので、病院に行くのに時間がかかる中山間地域に住む人への情報提供や災害時の安否確認にも使えると思っています。

病院内には患者や家族の相談窓口ができてきていますが、「助けてほしい」とそのドアをノックした人しか救えません。それだけでなく、ノックできない人も救っていくことが大切です。インターネット上のネットワークを使うことで、都会と地方の情報格差や支援の格差をなくしていきたいと考えています。

一般社団法人CSRプロジェクトでは、就労に関する患者向けの電話相談、医療者・人事担当者のための就労サポートの電話相談、雇用の継続や就職・復職への悩みなどを語り合う「サバイバーシップ・ラウンジ」などに取り組んでいます。電話相談はがんを経験した社会保険労務士や社会福祉士、人事担当者らが対応します。2014年ごろから「うちの社員ががんになって。どうすればいいだろう」と企業からも相談されるようになり、時間と曜日を分けています。

■患者は「頼る勇気」、周りは「頼られる準備」を

――働くがん患者が増えるこれからの社会に向けて、桜井さんからメッセージをお願いします。

2018年3月に『あのひとががんになったら 「通院治療」時代のつながり方』(中央公論新社)という本を出しました。ここにも書いたのですが、患者には「頼る勇気」、患者の周りにいる人たちには「頼られる準備」が必要だと思います。

頼るって結構、勇気がいることじゃないですか。誰かに頼りたくても、「あの人は子育て中だから、がんになったと言ったらビックリしちゃうかな…」と思うと遠慮してしまう。でも、人って、頼ったら動いてくれるもの。一人で抱え込まず、つらい気持ちを打ち明けて頼ることも大切です。

一方、頼られた側は心の準備ができていないときに、「がんになった」と聞くと思考がフリーズしてしまいます。そこで、がん患者ならではの悩みや気持ち、患者とのコミュニケーションの取り方などをこの本にまとめました。例えば、患者が言われて傷ついた言葉に「頑張って」があります。何となく使いがちな言葉ですが、既に頑張っている人に言うと、「まだ頑張る必要があるの?」と思わせる場合も。頑張るという言葉を使うならひと言添えて、「一緒に頑張ろうね」と伝えると温かい印象に変わります。

(ライター 福島恵美、カメラマン 村田わかな)

桜井なおみさん
一般社団法人CSRプロジェクト代表理事、キャンサー・ソリューションズ社長。1967年生まれ。37歳のときに乳がんが見つかり、治療のため勤めていた設計事務所を休職。職場復帰後、治療と仕事の両立が困難となり退職。その経験をもとに、がん患者の就労を支援する「CSRプロジェクト」を始める。その後、キャンサー・ソリューションズを創業し、がん経験を生かしたコンサルティングやプランニング事業などを展開。厚生労働省がん対策推進協議会委員を務めた。

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