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秩父のホルモン、幸せな家族の味 林家たい平さん

食の履歴書

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NIKKEI STYLE

「笑点」のレギュラーで落語家の林家たい平さん。物まね、絵画にも秀で、テレビ、ラジオに引っ張りだこだ。売れっ子になっても「落語は庶民の芸」と派手な生活は慎む。その立ち振る舞いには、食を通じて学んだ両親や先達、市井の人々の味な生き方が染み込んでいる。

真っ先に思い浮かぶのが、ふるさと・埼玉県秩父市の両親の味です。といっても家庭料理ではありません。実家から50歩も歩かないホルモン焼きの店「高砂」です。

炭火を囲む優しい顔

家は洋服のテイラーを営んでいました。当時、背広はテイラーに頼むのが一般的で、本当に忙しかった。翌日の納品のために徹夜も当たり前。子供のごはんを作る余裕もありませんでした。ですから、おなかがすくと「明(本名は田鹿明)、いくか」と高砂へ連れて行ってくれたのです。

高度成長期に大阪からやってきた労働者がホルモン文化を持ち込んだとかで、秩父には小さな盆地に50軒ものホルモン焼き店がありました。高砂は辛みの強いタレが特徴で、誰もまねができない。でも子供には辛いので、水で洗い落としてもらっていました。

普段殺気立っている両親が炭火を囲むと優しい顔になります。炎のオレンジ色が当たった穏やかな表情が好きで好きで。今も地元へ戻ったら、どんなに忙しくても高砂へ立ち寄ります。兄と姉と3人で食べに行くこともあります。高砂で食べると「また東京でがんばろう」と力がみなぎります。秩父・愛の原点です。

おもてなしは残さず

修業時代の食も思い出深い。林家こん平師匠は若い頃、満足に食事ができなかった。そういう思いをさせたくないのか「いっぱい食べろ」と。僕らは飽食の時代なので価値観が違いますが、気持ちに応えてすべて平らげます。師匠より少し早く食べ終え、つまようじやティッシュをさっと差し出す。それも修業です。

おかげで今も仕事先でおもてなしを受けるとき、必ず食べつくします。「落語が面白かったですね」なんて後で話題にもなりませんが、「残さずに食べた」というのは記憶に残ります。何よりのコミュニケーションで、相手は「気持ちがいい」とまた呼んでくれる。ごちそうするのは自分の獲物を分け与える行為で、残すのは失礼に当たります。

弟子入り前にこん平師匠の師匠、林家三平師匠の実家で住み込みを始めました。お礼奉公を含め6年半。自分で好きなものを食べられないのが修業。だから早く一人前になりたい、と好きな食事をすることが目標になりました。

前座のとき、演芸場近くの居酒屋に入ると、店主が「君を池袋(の寄席)で見たよ」とビールと焼き鳥をごちそうしてくれましてね。その後も500円でビール2本、焼き鳥10本を出してくれる。さっと食べて、師匠の家へ帰ると「おなかがすきましたー」と用意されたカレーライスを食べるんです。居酒屋の店主は亡くなってしまいました。出世払いしようと思っていたのですが。娘さんが後を継いでいるので今も顔を出します。

そば屋で学ぶ庶民の芸

自由の身になってからは、そば屋ですね。多くの師匠に学びました。古今亭志ん朝師匠は、飲んで、食べているだけで色気を感じました。5代目・柳家小さん師匠も粋だった。周囲のお客さんがじっと見ます。「自由に食いてーなー」なんて笑っていましたが。

連れて行ってもらった神田のまつやでは今でも1人で食べています。「師匠たちのように粋に食べられているのかな」と思いながら。そば屋は今も修業の場。隣が近く、長屋のように話も、食べる音も、息づかいも聞こえます。相席した人と意気投合したら一緒に飲みますしね。僕がプロデュースした「たい平カレー」も、まつやで「カレーのオリエンタル」の社長と出会ったのが始まりですから。

だから有名なフレンチとかには行きません。落語はやはり庶民の芸。なけなしのお金で見に来てくれる普通の人の生活感覚に寄り添うことが大事です。どんなに遅くまで飲んでも朝6時半に起きて、子供たちと朝食をともにします。会社に行くわけじゃありませんが、日常感覚を持つことを心がけています。

人の幸せは優しさ、情け、助け合いと、人と人とのつながりですよね。落語にはそれが圧倒的に入っている。うまい後輩もたくさんいますが、落語の力はやはり人間力。縁を大切にすると運気も上がります。その時についていけるように準備を怠ってはならない。小さん師匠は「芸は人なり」と教えてくれました。単純な芸だから「人間」が出てしまうんですよ。

師匠も愛するねぎま鍋

東京・浅草のすしや通りにあるすし店「寿司清」(電話03・3841・1604)は30年以上通い続ける老舗だ。林家こん平師匠に連れてきてもらったのが縁の始まり。こん平師匠が倒れたときも店主の長岡たかひろさんが「おすしを持っていって欲しい」とわざわざ作ってくれたという。とりわけ、かつおだしの汁とネギ、マグロを食べる「小さなねぎま鍋」は絶品だ。

ねぎま鍋はかつて東京・築地市場での競りの後に食べるまかない食だったらしく、15年前に築地の仲買人から「作って」と頼まれたのがきっかけ。調味料はできるだけ使わず、シンプルさが持ち味だ。たい平さんは長岡さんを「魚を深く勉強している」と話す。実際に築地だけでなく、千葉など様々な市場に出かけ、おいしく、鮮度の良い魚選びにこだわっている。

最後の晩餐

母のお手製の茶わん蒸しですね。鶏肉、ギンナン、ミツバに卵とシンプルな中身で、大好きなんです。秩父に帰ると、大きなどんぶりで出てきましたよ。茶わん蒸しなら、歯がなくなる晩年でもチュウチュウと入っていく感じで食べられるでしょう。

(編集委員 中村直文)

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