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がん患者の3人に1人が離職 個人や会社のせいなのか がんになっても働き続けたい ~ 桜井なおみさん(上)

日経Gooday

2018/10/4

がんになっても働きやすい社会の実現のため、一般社団法人CSRプロジェクト代表理事、キャンサー・ソリューションズ社長として活動する桜井なおみさん

 ある日、がんになったら、今まで続けてきた仕事はどうすべきか――。今、がん患者の3人に1人が働く世代(15~64歳)といわれている。しかし、告知された患者が慌てて離職したり、雇用する企業が患者の対応に困惑し、うまく就労支援できなかったりすることが少なくない。自身もがんになったライター・福島恵美が、がんと診断されても希望を持って働き続けるためのヒントを、患者らに聞いていく。

 第1回は、自身も乳がん経験者で、一般社団法人CSRプロジェクト代表理事、キャンサー・ソリューションズ社長として、がんになっても働きやすい社会を目指して活動する桜井なおみさんに、働く世代のがん患者が置かれている社会的な現状を伺った。

■治療の副作用から復職後1年半で退職

――まず桜井さんご自身の経験についてお教えください。桜井さんは設計事務所のデザイナーとして仕事をされていた2004年に、乳がんの手術を受けられました。治療を受けている間、仕事はどうされたのですか。

 私は30代でがんの診断を受けたのですが、手術後に抗がん剤治療をすることになり、約8カ月間休職しました。働く世代の人ががんと告知されれば「仕事、どうしようか…」と考えますよね。私がいた会社には、病気のときに休むための制度がありませんでした。有給休暇は診断から手術までの間に使い切ってしまったので、抗がん剤治療を受けるためには傷病手当金を使って休職するしかありませんでした。

 復職後はホルモン療法を受けるために通院が必要で、新しく付与された10日間程度の有給休暇を使って会社を休みました。通院しているうちに有給はなくなります。他に休む制度がなかったから、通院の日は欠勤することに。当然、給料は減りますよね。働いて得た収入がそのまま治療費になってしまい、何のために働いているのだろうという気持ちになりました。

 退職を決めたのは、手術の影響で出てきた右手の浮腫の後遺症に悩まされたから。パソコンのマウスを長時間操作すると、手のむくみがひどくなったんです。体力も気力も落ちていたし、定時で帰れるような働き方ができればと思っていましたが、仕事量が減るわけでもなく無理でした。復職して1年半後に会社を辞めました。

 その頃、同世代のがん患者で新聞記者をしている女性と出会って…。彼女は亡くなる2日前まで記事を書き、スケジュール帳に予定を入れていました。私は仕事を辞めていたから、何かとても大事なものを諦めたのではないかという気がし、患者にとって働く意味とは何かを考えるようになりました。がん患者の就労問題を社会に問いたいと思っていたとき、東京大学で医療政策を考える社会人向けの講座があることを知り、参加することにしたのです。

■働く意思があっても3人に1人が離職

――東京大学の社会人向け講座では、どのような活動に取り組まれたのですか。

 行政関係者、医療者、メディア関係者、患者というステークホルダーから最低1人ずつが参加して1つの班をつくり、医療政策を考えてまとめました。私は患者として、がん患者の就労・雇用支援をテーマに調査しました。そして、2008年に行ったアンケート調査の結果、8割の人に働く意思があるのに3人に1人が離職していたことが分かったのです。このときの研究班の名前がCSRプロジェクト。この名前をそのまま引き継ぎ、がん患者の就労支援を行う活動を始め、2008年に団体を設立して、2011年にCSRプロジェクトを一般社団法人として法人化しました。

――働く世代のがん患者が、3人に1人離職しているのは多い印象を受けます。

 この状況は現在も変わっていません。CSRプロジェクトでは最近もがんと就労の調査を行いましたが、働く人のほぼ3~4人に1人ががんで離職しています(「がん患者に対する就労状況の調査」2008年、2016年CSRプロジェクト調べ)。

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