娘が写った写真をまとめサイトで発見 どうすれば?
パソコン&ネット法律相談所(5)
パソコンやネットを使うとき、法律がからむ疑問は数多い。疑問を払拭し、正しい使い方を明らかにしよう。今回はプライバシーについて。一般の人が情報発信できる時代は、自分の情報が勝手に発信される危険性もはらんでいる。「他人のブログの写真に自分が写り込んでいる」「エゴサーチ(自分の名前をキーワードにして検索)をしたら自分の電話番号が出てきた」「子供のLINEをのぞき見して親子ゲンカになった」など、身近で起こりそうな問題から考えてみよう。
プライバシーを守る権利は、「すべて国民は、個人として尊重される」という「基本的人権」の一つ。プライバシーの侵害とは、非公開の情報や、本人が公表を望まない情報を勝手に公開し、本人に精神的な負担などを与える行為と考えられる。
プライバシー権や自分の顔を勝手に撮影・公開されない「肖像権」は、法律上明確な規定はないが、判例上認められている権利だ。著名人の場合、その情報には経済的価値があるため、無許可での撮影・公開をされない「パブリシティー権」も加わる。
一方で、国民には「知る権利」もある。報道目的の場合、著名人の私生活を明かしたり、ニュース映像に一般人が映り込んだりしていても、プライバシー侵害になりづらいのはこのためだ。しかし、SNSなどでの情報発信は通常、報道目的には当たらない。通りすがりの著名人を勝手に撮影してSNS上で公開するなどもっての外だ。
A.掲載者を探して削除を要求できる
何気なく見ていたWebサイトに我が子の写真があれば、驚くのは当たり前。小さく写り込んでいるならまだしも、旅先で一人たたずむ娘の顔がはっきり分かるようなら問題だ。
個人が特定できる写真を本人の許諾なしに掲載すれば肖像権の侵害になり得る。自身が撮影した写真やイラストを勝手にほかのWebサイトで使われた場合は著作権の侵害に当たり得る。
どちらも刑事上の罪は問えないが、民事上の差し止め請求や損害賠償請求は起こせる。とはいえ、裁判となれば一大事なので、まずは掲載者への削除請求から始める。まとめサイトの場合でも執筆者を特定できれば直接削除要求ができる。すぐに削除できたり、相手に謝罪の意思があったりするなら、穏便に済ませることもできるだろう。
執筆者が特定できない場合や対処が遅い場合には、SNSなどで設置している相談窓口に「送信防止措置依頼書」を送って削除依頼を行う。正式な依頼を出しても削除されないなら、弁護士への相談も検討しよう。
A.ネット利用を見守るのも親の役目
メールやSNSでのやり取りは個人情報やプライバシー権の対象となり得る。夫が妻のスマホをのぞき見れば、プライバシー侵害になりかねない。ただし、子供が未成年の場合、子供の行動を見守るのは親の義務でもあるため通常は法的には問題ない。
とはいえ、無断で見たことによって、親子の関係にヒビが入っては困る。携帯機器を持たせるときに、親が見る可能性があることを話し合っておこう。
なお、18歳未満の子供にスマートフォンなどを提供する事業者には、フィルタリング(暴力や性など特定のジャンルを見せない)の設定が義務付けられている。危ないサイトを見せないことも大人の義務だ。
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(ライター 鈴木眞里子、法律監修 西村あさひ法律事務所)
[日経パソコン8月27日号の記事を再構成]
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